助けが必要なとき、必死に祈り求めた経験が誰しもあるのではないでしょうか。今回ご紹介するある家族もそうでした。母親が4人の子供を連れてイギリスからアメリカまで向かう道中で、一番幼い息子の持病が悪化してしまいます。父親は一緒におらず、どうすることもできないまま苦しむ息子を腕に抱き、母親は必死に、神が奇跡を起こしてくださることを祈りました。

長い旅

2009年10月25日は、いつものように大混乱の朝でした。長い旅を前に、時間ギリギリまで最後の荷造りをしていました。長い旅と言っても、今回は普段とは違っていました。わたしと家族はイギリスからアメリカへ帰国することになったのです。しかし、わたしは家族と一緒には帰りませんでした。まだ帰国してからの仕事も決まっておらず、仕事を探しながら今の会社で働かせてもらうことになっていました。その間、妻と4人の子供たち(13才、9才、6才、2才)はコロラド州デンバーに戻ることになりました。

そんな慌ただしい中、わたしの2才の息子が部屋に入って来るなり、アザラシにも似た、まるで犬が吠えているような咳をし始めました。「あぁ!またクループ性の咳が始まった!」と思いました。息子はクループが始まるといつも喘息がひどくなるので、わたしたちにとっては大きな心配事でした(クループとは、咽頭が炎症を起こして腫れることでひどい咳が出る症候群のこと)。妻に吸入器はあるかとたずねると、彼女はしっかり持っていると答えたので少し安心しました。わたしは即座に「出発前に、息子に(導き、慰め、癒しを与える)神権の祝福を授けた方がいい」と感じたものの、大急ぎであれこれ準備しているうちに忘れてしまいました。

熱心に祈る男性

わたしたちが無力に感じるときには、常に祈りの力に頼ることができます。

空港でのハプニング

その日の夕方、義理の母から電話がかかってきました。妻と子供たちは無事にシカゴに到着しましたが、すべてが良好だったわけではありませんでした。息子は呼吸が困難な状態でしたが、妻は空港の税関を通り、荷物をまた預ける手続きもしなければなりませんでした。そのため、吸入器とスペーサーを取り出すのを忘れて荷物を預けてしまったのです。スペーサーは吸入器に取り付けるマスク・タイプのもので、それを直接鼻に当てて使います。息子はまだ幼く、うまく吸入できないため、スペーサーはなくてはならないものでした。彼らはもう搭乗ゲートにおり、妻はどうしていいかわからず途方にくれながら、苦しむ息子を抱いて落ち着かせようとしていました。必死に祈っていると、自分の母親に電話をして、わたしに祈るように伝えてもらうべきだと感じました。そして、義理の母はわたしに電話をしてきたのです。

わたしたちが無力に感じるときには、常に祈りの力に頼ることができます。

わたしは電話を持ったままひざまずき、義理の母と一緒に力強く祈りました。息子に祝福を与えることを忘れてしまったこと、そして妻が大変なときに一緒にいてあげられないことに、ひどく後ろめたさを感じました。このような感情が心と頭の中を渦巻きながら、わたしは主に、わたしの大切な妻が慰めを受け、何をすべきか知るため知恵を授け祝福してくださるようにと嘆願しました。わたしは息子のために、彼がどうにかして呼吸ができるようになり、すべてうまくいくようにと全身全霊で祈りました。わたしは、すべては大丈夫だと信頼する気持ちを持って「それでもわたしの思いではなく、主の御心が行われますように」と言い、祈りを終え電話を切りました。

それから3時間以上、わたしは何度もひざまずいて祈りました。ひざまずいていない時は心の中で祈りました。デンバーに到着する時間が近づくにつれ、早く電話がならないかと時計ばかり見ていました。待っている間は永遠にも思えました。やっと電話が鳴り、待ち焦がれた妻の声を聞くことができました。妻は、デンバーに無事に着き、義理の母が住む町にいることを知らせてくれました。わたしがシカゴで何が起きたのか尋ねると、妻はわたしに椅子に座るように言い、話を続けました。

喘息の吸引器

「わたしも今、吸入器を持っています。お話を聞いた限りでは、息子さんのと同じものではないですか?」

奇跡を起こす神

妻は、自分の母親に電話をすると、その場で人目もはばからず泣き出したそうです。すると、隣に座っていた女性が親切にも「わたしに何かできることはないですか」と声をかけてくれました。妻はこの親切な女性に状況を説明し、吸入器が入ったスーツケースを預けてしまい、どうしたらいいのか分からないと言いました。

この女性は注意深く話を聞くと「わたしも今、吸入器を持っています。お話を聞いた限りでは、息子さんのと同じものではないですか?」と言いました。

妻がその吸引器を見てみると、息子のものと同じであることが分かりました。しかし妻は「息子はまだ小さいため、吸入器だけでは使えません。スペーサーがついたマスクタイプのものでなければいけないんです。スペーサーもスーツケースの中で、手元にはありません」と言いました。

すると、その女性の隣に座っていた男性が「もっと早く名乗らずに申し訳ありません。わたしは医者です。穴を開けられるようなコップがあれば、それをスペーサーの代わりに使うことができますよ」と教えてくれました。

今度は、通路の向かい側にいた女性が「プラスチックのコップがありますけど、これは使えますか?」と言いました。

「はい」と医者は答え、彼女からカップを受け取りました。

彼はすぐにコップに穴を開け、吸入器を取り付けることができました。妻がそれを息子の鼻にあてると、彼は数分で正常に呼吸をすることができるようになりました。

妻はその場にいたすべての人々に何度も礼を述べ、奇跡を起こしてくださった天父に頭を垂れ、感謝の祈りを捧げました。

末日聖徒イエス・キリスト教会の宣教師

「目を開けて顔を上げるや否や、妻は目の前にスーツを着て、名札をつけた若い男性が空港内を歩いているのが見えました。」

さらなる奇跡

しかし、奇跡はこれだけではありませんでした。息子が呼吸できるようになったものの、妻は神権の祝福から得られる平安を得たいと思いました。彼女は愛に満ちた天父に祈り、息子に祝福を授けることができるように、どうにか宣教師を彼女の元に送ってくださるようにと願いを注ぎ出しました。

目を開けて顔を上げるや否や、目の前にスーツを着て、名札をつけた若い男性が空港内を歩いているのが見えました。彼女は彼を呼ぶと、彼とそばにいた彼の父親が彼女の元に来てくれました。

妻は「息子を祝福してくださいませんか?彼は呼吸がよくできず困っていました。この親切な女性が、彼女の吸入器を貸してくれたおかげで、今は安定していますが、祝福してもらえればわたしはもっと安心できます」と言いました。

若い男性は油を取り出し、息子を油で聖別し、彼の父親と共に祝福を授けてくれました。

息子はその後も発作が起きることなく、旅を続けることができました。デンバーに到着する頃までには、息子は正常に呼吸できるようになっていました。

シカゴ空港で同じ種類の吸入器を持った女性が妻の隣に座っていたのは、偶然だったのでしょうか?医者がその場にいたことや、プラスチックのコップを持った女性が近くにいたことも、ただラッキーだっただけのことでしょうか?宣教師がタイミングよく歩いていたのは、たまたまだったのしょうか?

これらすべての出来事は、偶然だったのでしょうか?いいえ、わたしは偶然だったとは思いません。わたしは、天父を信頼する者の祈りを聞かれ、祈りに答えるために道を備えてくださる愛に溢れる神がおられることを信じていますし、知っています。わたしは、神権の力は真実であることを知っています。神は、奇跡を起こす神であられることを知っています。

 

この記事はもともとRandall McNeelyによって書かれ、ldsblogs.com投稿されました。