不安の中で迎えた新しい命

2018年の秋。
24歳のユキは、初めての赤ちゃんを授かっていました。
幸せな結婚生活の中にいながらも、心の奥には小さな不安がありました。

わたしは本当にこれでいいのかな?

仕事のキャリアはまだ浅く、周りの友人たちは将来の夢や旅行の話で盛り上がっていました。
そんな中でユキは、自分だけが違う道を歩いているように感じたのです。

今はキャリアを優先すべきなんじゃない?今が母親になるタイミングなのかな?

迷いを抱えながら、ユキはその年の総大会を観る準備をしていました。
そしてそのとき、彼女の心にまっすぐ届く言葉を語ったのが、当時の預言者ラッセル・M・ネルソン大管長でした。

画像:末日聖徒イエス・キリスト教会

母親という使命を新しい目で見る

ネルソン大管長がそのとき語ったのは、『イスラエルの集合への姉妹の参加』というお話でした。
その中で彼は、南米を訪れた際のちょっとした出来事を紹介しました。

ある集会で「父」と言うべきところを、誤って「母」と言ってしまったのです。
会場が笑いに包まれる中で、大管長はこう説明しました。

そのとき、母親のみができる方法で世界を変えたいと、心の奥底から望んでいたために、思わず言葉に出てしまったのだと思いました。

そして続けてこう語りました。

長年の間、なぜ医師になることを選んだのかと聞かれるたびに、必ずこう答えてきました。
「母親になることを選ぶことができなかったからです。」

その言葉を聞いたユキは、思わず息をのみました。
成功を収めた心臓外科医であり、神様の預言者でもある男性が「母になりたかった」と語るなんて。

けれど、その後の言葉がすべてを明確にしました。

義にかなった女性にしかできないことがあります。
母親の影響力を与えることのできる人は、母親のほかにはいません。

その瞬間、ユキの中で何かが変わりました。
自分の妊娠は人生の脱線ではなく、神様の働きの一部だと感じたのです。

母親になることは、1人の人間としての自由と価値を失うことじゃない。永遠の目的を見つけることなんだ。

自分は創造という神聖な働きに加わっていた。そう気づかせてくれたのは、ネルソン大管長でした。

犠牲が祝福に変わるとき

ユキはその後、主の教えをより深く理解するようになりました。

自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分の命を失う者は、それを見いだすであろう。

マタイによる福音書16章25節

母になるということで、自分の一部を手放すことになるかもしれません。
でもそれは、もっと大きな何かを見つけるための道でした。

母になることで自分の時間、体、夢を手放すように感じるときもあります。
でもそれは「失う」ことではなく、「愛を与える」ことなのです。

世間では、自分を犠牲にするのは損だと言う人もいるでしょう。
でもキリストは、犠牲の中にこそ本当の満足があると教えられました。

女性に与えられた神聖な役割

ネルソン大管長は、次のようにも話しています。

わたしが母という言葉を使うときには、この世で子供を産んだり養子に迎えたりした女性だけを指しているのではありません。
天の両親の成人した娘たち全員のことを言っているのです。
すべての女性は母親です。それは、神から永遠の行く末に通じる徳を受けているからです。

女性には、人の心に気づくという特別な賜物があります。
誰かの悲しみに敏感で、困っている人を見ると自然に手を差し伸べる。
それは、神様から与えられた優しさであり、まさに「母性」そのものです。

たとえそれを「おせっかい」と言う人がいても、 その優しさが誰かを救っているのです。

母親でありながらキャリアを積み上げる人もいます。忙しい中でも、母として、女性としてできることがきっとあります。

また、物理的に母になることが難しい場合でも、母親として奮闘している人を支えたり、教会や地域の子どもたちを見守り育てたりすることができます。

みんなで子どもを育てる社会へ

神様は、男性と女性という2つの性を創られました。どちらにも神聖な役割があります。

しかし、だからといって子育てを母親だけに任せていいわけではありません。父親にしかできない育児もあり、男性と女性が協力することで、家族はより強く、温かくなります。家庭が落ち着くと、地域社会にもその安定が反映されます。

ユキのように不安を感じながらも、自分にとっての答えを見出す人もいるでしょう。
大切なのは、どんな立場の人であっても、子どもは大人の愛と導きなしには育たないということを忘れないことです。

短期間の犠牲もあれば、長期に渡る犠牲もあります。でも、神様に頼り、御霊の導きに従うことで、わたしたちは神様の望む方法で子どもを育てることができます。

そして何より素晴らしいのは、大人一人ひとりが子どもたちと関わり、その成長を助けることで、 未来全体を希望で満たす力を持たらせることです。

あなたと子どもが過ごす時間は、まさに輝く未来を作っている瞬間なのです。

感謝と確信を胸に

あれから7年。
31歳になったユキは、3人の子どもの母になりました。

ときどき、「もし別の道を選んでいたら」と思うこともあるでしょう。
もっと社会的に成功していたかもしれません。けれど、彼女の心はいつもあの言葉に戻ります。

母であることは中断ではない。使命だ。

母親の影響は永遠に続きます。たとえ世界が気にしていなくてもです。

ユキは今日も、子どもたちの笑顔を見つめながら静かに微笑みます。

わたしは知っています。母親としての働きには意味があります。
そして、ネルソン大管長もきっと、わたしのような母になりたかったと思ってくれるでしょう。

参照:maisfe.org

イスラエルの集合への姉妹の参加』ラッセル・M・ネルソン大管長 2018年10月総大会