末日聖徒イエス・キリスト教会の神殿は世界中にあり、現在、建設が計画されているのを含めて、335あります。これまで神殿の中を見たことがない人には、とてもミステリアスな建物に思えるかもしれません。そのため、一部の人々はこの何かを隠している宗教だと思い込んでいます。確かに、わたしたちは神殿をとても神聖なものとして扱っていて、神殿の外では話さない教えもあります。しかし、世界中の人々が神殿の完全で神秘的な体験をすることを、心から望んでいます。世界中に何万人もの宣教師が派遣されているのはこのためです。
神殿にはいくつもの神聖な側面があり、それについて公に議論しないように求められています。そのため教会員でさえも神殿の中で行われているほとんどのことを話してはいけない、と解釈することがあります。しかしこれは間違いです。ここで共有できないことも確かにありますが、神殿で行うことのほとんどは共有できるんです。
この記事に含まれる神殿礼拝に関する詳細な説明のほとんどが、聖典や現代の末日聖徒指導者からの引用です。教会が公開している画像と合わせて、世界中の神殿にある部屋と、それぞれの部屋で行われていることを見てみましょう。
最初に知っておくべきこと
神殿が建設されると、オープンハウスが行われ一般公開されます。「奉献」されて儀式が始まる前に、神殿内の公開ツアーに参加することができます。この記事に掲載されている写真は、神殿が奉献される前に撮影されたものです。神殿が奉献されると、写真撮影は禁止されます。
末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は、神殿で儀式を執り行います。儀式とは、「神権の権威によって執り行われる神聖で正式な行為」です。神殿で行われる儀式もあれば、そうでないものもあります。バプテスマや聖餐は神殿の外で行われる儀式の例です。神殿での儀式を受けるためには、参加者はバプテスマを受けた末日聖徒イエス・キリスト教会の会員である必要があり、また戒めを守って生活しなければなりません。基準を満たしている個人には、世界中の神殿に入ることを認められた「神殿推薦状」が与えられます。
玄関に入ってみましょう
世界中どこの神殿に入る時も、上の写真のような玄関から始まります。入口のカウンターでは、白い服のボランティア職員があなたを迎えてくれます。そこで神殿推薦状を出してチェックインします。
神殿推薦状は、ここから神殿の中に入るためには必要不可欠です。推薦状がない方でもロビーのイスに座って、静かな空間を体験することができますよ。
服装について
神殿に参入する人たちは、神殿内のそれぞれの場所で異なる服を着ています。こちらのガイドを参考にしてください。
日曜日の服装:神殿に行くときは、多くの会員は日曜日に教会に行く時と同じ服装をしています。理由は、「主の家」でもある神殿に入って主への敬意を表すためです。
ほとんどの男性は、スーツやワイシャツにネクタイにスラックスとビジネスでも使える靴を着用します。女性は、ワンピースやブラウスとスカート、スカートのスーツに、パンプスやバレーシューズなどの方が多いです。
服装について質問がある場合は、ワードや支部(教会の地域ごとの単位)の指導者やほかの教会員に聞くといいでしょう。また、教会員も初めて神殿に入る会員や青少年にそのことを教えてください。
白い神殿着:日曜日の服装で神殿に入ったら、ロッカールーム(ステキなロッカールームです)、そこで真っ白な神殿着に着替えます。(上の写真参照)
神殿のガーメント: 詳細は後ほど
神聖な儀式用の神殿着:これについても後で詳しく述べますが、神聖な儀式用の神殿着は白い神殿着とは違うことを覚えておいてください。儀式用の神殿着は、白い神殿着の上から着用します。
では、ここから更に神殿の中を見てみましょう。
バプテスマフォント
末日聖徒が “死者のためのバプテスマ “と呼ぶ儀式は、11歳でも行うことができます。イエス・キリストは 「水と御霊によって生まれなければ神の国に入ることはできない 」と教えられました。
しかし、生きている間にバプテスマを受ける機会がなかった人々はどうなるのでしょうか。永遠に救われない運命なのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
この儀式の部屋では、神殿推薦状の保持者は、バプテスマの機会がないまま亡くなった人々(できれば自分の先祖)のために、身代わりのバプテスマに参加することができます。そして、身代わりの儀式を受け入れるかどうか決める機会が先祖の霊にあると信じています。
上の写真の牛の彫刻が土台になっているバプテスマフォント(洗礼盤)は、ユニークな形だと思いませんか?これは旧約聖書の列王記上7章23-25節に記されているソロモンの神殿の「鋳(い)て造った海」を模したものです。
また海を鋳て造った。…その海は十二の牛の上に置かれ、その三つは北に向い、三つは西に向い、三つは南に向い、三つは東に向っていた。海はその上に置かれ、牛のうしろは皆内に向っていた。
列王記上7章23-25節
身代わりのバプテスマでは、儀式を受ける人は白い服(シンプルな白いジャンプスーツ)に着替え、バプテスマフォントに入ります。そして亡くなった人に代わってバプテスマの儀式が執り行われます。通常、数分の間に数人のためのバプテスマの儀式が行われます。
バプテスマが行われた後、バプテスマを身代わりで受けた同じ人が亡くなった一人一人について「確認」の儀式を受けます。聖書では、バプテスマの後すぐに、神権を持つ者が新しくバプテスマを受けた人の頭に手を置いて祝福し、聖霊の賜物を受けるようにと書かれています。(使徒8:14-17、使徒19:1-6)。現在では、この儀式は通常、バプテスマを受けた人が私服に着替えた後、神殿のバプテスマフォントに隣接した小さな部屋(下の写真)で行われます。
通常のバプテスマ(生きている人のためのバプテスマ)は、各地域の集会所のバプテスマフォントで行われます。また、生きている人の確認の儀式は、日曜日の聖餐会で行われます。バプテスマや確認の儀式に出席する機会があれば、ぜひ出席してください。末日聖徒イエス・キリスト教会の会員でなくても出席できます。
イニシャトリーの儀式と神殿着
古代、祭司が神殿に入る準備として、洗われ(レビ記16:4)、神聖な衣を身につけ(出エジプト記28:42-43、創世記3:7、10、21)、油を注がれました。出エジプト記40:12-13には、モーセの弟アロンがどのような過程を経たかが記されています。
アロンとその子たちを会見の幕屋の入口に連れてきて、水で彼らを洗い、
アロンに聖なる服を着せ、これに油を注いで聖別し、祭司の務めをさせなければならない。
これらの儀式は旧約聖書の時代にも守られていましたが、キリストの死後も同じような習慣が長く続いていたことを示す証拠もあります。初期キリスト教の教父であるエルサレムのキリル(西暦386年頃)は、彼の著書『Five Explanatory Lectures to the Newly Enlightened』の中で、「聖なる流水の槽から出たとき」、どのように「油注ぎを受け」、「主イエス・キリストの衣を着た」かを説明しています。
神様が定めた様式は現代も続いています。ボイド・K・パッカー会長は、「(洗いと油注ぎの儀式)の繋がりにおいて、神殿では正式に衣を着せられ、それに関連して驚くべき祝福が約束される 」と教えています。
上記で述べた確認の儀式と同じように、洗いと油注ぎ(入門の儀式とも呼ばれる)は、手を置くことによって個人的に行われます。パッカー会長が述べたように、儀式に参加する間、参入者は神殿のガーメント(神殿の白い衣服の下着)を着ます。少量の(ほんの一滴の)水と油も使われます。
末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は、一度洗礼と油注ぎを受け、その後に神殿のエンダウメント(下記で解説)を受けると、自分がした神聖な約束を思い出すために、生涯にわたって神殿のガーメント(下着)を身につけます。
自分のために一度だけ洗礼と油注ぎに参加し、その後亡くなった先祖のために何度でも儀式を繰り返すことができます。
神聖な儀式用の神殿着
神殿のガーメントと白い神殿着に加えて、神殿のエンダウメントという儀式でのみ着用される儀式用の神殿着もあります。以下の動画で、これについて詳しく説明しています。
神聖な神殿着が奇妙に思えるかもしれません。しかし、神殿で着るそれぞれの衣服には歴史と目的があるんです。出エジプト記28-29章には、現在の神聖な神殿着と驚くほどよく似たイスラエルの幕屋で古代の祭司たちの衣服について記されています。
古代の神殿と現代の神殿には多くの類似点があります。
古代の神殿のほとんどはモーセの律法の下で運営されていました。キリストがモーセの律法を成就した後も、神殿は初期のキリスト教の礼拝にとって重要なものとして存在し続けました。
しかし現代では、モーセの律法の時代に行われていた動物の生け贄などの儀式は行われていません。
エンダウメントの儀式
神殿でのエンダウメントの儀式は、上記の写真と似たような部屋で執り行われます。
ジェームズ・E・タルメージ長老は、エンダウメントの儀式についてこのように話しています。
現在、神殿で行われているエンダウメントの儀式は、過去の時代の意義と順序、そして人類史上最も偉大で壮大な時代である、現在の重要性に関する指導から成る。
この教育課程には、創造時代の最も重要な出来事、エデンの園における最初の両親の状態、不従順の結果として至福の住まいからの追放、労働と汗によって生きることを運命づけられた孤独で荒涼とした世界における両親の状態などが含まれており、 大いなる背信が贖われる贖罪の計画、大いなる背教の時代、古来からのすべての力と特権を持つ福音の回復、現世における個人の純潔と正しいことへの献身、福音の要求事項の厳格な遵守という絶対的な条件が不可欠である。
ジェームズ・E・タルメージ 「The House of the Lord」Salt Lake City: Bookcraft、1962、 pages 99-100
神殿エンダウメントの儀式は、生涯で一度だけ自分のために受けることができます。しかし死者のためのバプテスマと同じ様に、亡くなった人の代わりに何度も受けることができます。
エンダウメントでは、一般的にビデオ形式で天地創造とアダムとエバの物語を説明します。創世記1-3章を読んだことがある人なら、エンダウメントの儀式の約70%はすでに知っているでしょう。
儀式ではさまざまな象徴がたくさん使われていますが、わたしたちがなぜ神様から離れてしまったのか、そしてイエス・キリストがどのようにしてわたしたちを神様の元に戻し、神様のようになることを可能にしたのかを説明しています。
エンダウメントの儀式は、ストーリー、聖約(神様の戒めに従うという神様との約束)、導き、象徴、祈りを通して行われます。具体的に、わたしたちは次のことを誓います。
- 神の戒めに従う
- イエス・キリストの福音に従う
- 道徳的な聖さを保つ
- 時間と才能を主の奉仕に捧げる
古代の神殿には、現在の神殿と同じように複数の部屋がありました。そして古代の神殿と同じように、儀式の進行に合わせて参加者が神殿の部屋を進んでいくことが、神の御前に向かう旅を象徴しています。
イスラエルの幕屋とソロモンの神殿には、ともに外庭、「聖所」、「至聖所」がありました。また、聖所と至聖所を隔てるベールがありました(出エジプト記26:33)。ある部屋から次の部屋(神に向かう私たちの旅を象徴している)に行くには、ベールを通らなければなりませんでした。
現代では、エンダウメントの儀式が進むにつれて、参加者は神殿の規模に応じて、複数のエンダウメントの部屋を通ることがありますが、天を象徴する最も神聖な部屋にたどり着くためには、古代の人々が通ったような場所を通らなければなりません。
こちらの写真は、さまざま神殿にある、儀式の最後の「日の栄えの部屋」の写真です。
日の栄えの部屋では、特に教えを受けるような儀式はありません。そこは個人の瞑想、祈り、啓示のための場所なのです。日の栄えを出た参加者は、更衣室で神殿に来た時の服に着替えて、家に帰ります。
結び固めの部屋
これで終わりではありません。まだ紹介していない部屋がいくつかあります。
上の写真は、末日聖徒イエス・キリスト教会のさまざまな神殿の結び固めの部屋です。この部屋では結婚の儀式が執り行われます。
祭壇の両側の席には、神殿の推薦状を持った招待客が日曜日に教会に行くときのような服を着て座ります。新郎新婦は儀式用の神殿の服を着て、結び固めの部屋の中央にある祭壇の両側にひざまずき、結び固めの儀式執行者が儀式を執り行います。花嫁は、ある条件を満たせば、通常の神殿の白いドレスの代わりにウエディングドレスを着ることができます。
祭壇では、新郎新婦が互いに、そして神様と約束を交わし、それぞれが約束を守る限り、現世だけでなく、時を超えて永遠に夫婦として結ばれます。一般的にはこの儀式はキスで終わります。(ちなみに、キスをしなくてはいけないという決まりはありません。)
この儀式を通して、子供も両親と永遠に結ばれることができます。結び固めの部屋は、身代わりの結び固めの儀式にも利用されます。
花嫁の部屋
こちらの写真は「花嫁の部屋 」です。儀式の後、花嫁がウェディングドレスを着て神殿の外へ行くために着替えに使う特別なドレスルームが用意されています。とてもステキな部屋です。一方、新郎は通常のロッカーで着替えます。これについて不満を聞いたことは、今のところありません。
現代の啓示と神殿での儀式の変化
現在わたしたちが知っているような神殿の慣習や儀式は、一度に誕生したわけではありません。それは啓示的なプロセスでした(そしてそれは今日も続いています)。実際に、2019年1月2日、末日聖徒イエス・キリスト教会の大管長会は以下のように繰り返し述べています、
「現在までの何世紀もの間に、神殿の儀式の内容は定期的に調整されてきており、その中には新たな言語や内容の組立て、コミュニケーション、記録等などが含まれています。主がその弟子たちに教える度にこれらの調整が行われ、それらに終わりはないということを預言者たちは教えてきました。」
これが神殿です!
今回ご紹介したのはとても神聖な建物で、この中で行われている儀式はとても神聖です。
外から見ても中から見ても、神殿での儀式は少し奇妙に見えるかもしれません。
多くの人にとって、祈りも聖餐式もバプテスマも奇妙に思えるでしょう。あまり知らないもの、もともとなかったものは、最初は奇妙に見えるものです。
神殿の儀式や礼拝は、古代ユダヤの神秘主義に深く根ざしています。現代の日本人の感覚からすると奇妙に思えるのも理解できます。
あなたが末日聖徒イエス・キリスト教会の会員でなくても、ぜひ神殿には最大限の敬意と尊敬を持って接してください。神殿がわたしたちの信仰において非常に重要で、非常に神聖なものだからです。
今こうしている間にも、世界中のいくつかの神殿が建設中です。機会があれば、お近くのオープンハウスや訪問者センターで、神殿の美しさと威厳をご自身で体験してみてください。
この動画も神殿の中でのことについてお話しています。
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この記事は、THIRD HOUR にて David Snell によって書かれた記事を元にしています。