「宗教は人生を豊かにするのか」という問い

現代の社会では、宗教を持たない人が増えていると感じます。

日本のような先進国では、「人生を豊かにするために宗教は必要なのだろうか」と考える人も少なくありません。実際に、信仰プラスにもそのような声が届くことがあります。

科学や技術が発達し、欲しい情報はスマートフォンで簡単に手に入る時代です。

かつて宗教は、昔の人々の生活に密接に関わりがあるものでしたが、現代ではそれほど重要ではないと感じる人もいるでしょう。

しかし近年の研究は、宗教が単なる伝統や習慣以上の役割を果たしている可能性を示しています。

その代表的な研究の一つが、ハーバード大学を中心とする研究者たちによる「Global Human Flourishing Study(世界の人々の充実度に関する研究 )」です。

この調査は22カ国、20万人以上を対象に行われた世界最大級の研究で、人々がどのようなときに「繁栄している」と言えるのかを調べています。

ここでいう「繁栄」とは、お金を持っていることだけではありません。

  • 幸福感がある
  • 心身が健康である
  • 良い人間関係を築いている
  • 人生に意味や目的を感じている
  • 経済的に安定していること など

これらを含む、人生全体の充実度を表しています。

研究者たちはこうした要素を総合して「充実度指数 」を算出しました。

世界規模の調査で見えた共通点

この研究で注目されたのは、世界中の人々に共通しているある傾向です。

宗教的な礼拝に参加する人ほど、繁栄度が高い傾向が見られたのです

もちろん、宗教を持てば必ず幸せになれるという意味ではありません。人生の幸福には健康や家庭環境、収入、人間関係など多くの要素が関係しています。

それでも、世界22カ国、20万人以上を対象にした調査で、宗教と繁栄との間に明確な関連が見られたことは興味深い結果です。

宗教は単なる個人的な信念にとどまらず、人々の生活や人生の満足度にも、何らかの影響を与えている可能性があります。

末日聖徒の幸福感は高い水準だった

この調査にはどの宗教に所属しているかに関する質問も含まれており、末日聖徒イエス・キリスト教会の会員についても分析が行われました。

アメリカ国内のデータを見ると、末日聖徒は充実度指数において高い水準を示しました。

特に目を引くのは幸福感に関する結果です。

末日聖徒の30%が、自分は「非常に幸福である」と回答しました。これに対して、無宗教者は16%、無神論者は14%、不可知論者は12%でした。

また、末日聖徒の65%が「少なくとも週に1回は礼拝に参加している」と回答しており、調査対象となった主要な宗教グループの中で最も高い割合でした。

礼拝への参加そのものが幸福を生み出しているのか、それとも幸福な人ほど礼拝に参加するのかは、この調査だけでは分かりません。

しかし、信仰を持ち、継続的に宗教活動に参加している人々が、高い幸福感を報告していることは事実です。

家族の時間の確保もその質を上げることも宗教が助けとなることがある

心の健康を支える信仰

精神的健康についても興味深い結果が見られました。

うつ症状を報告した割合は、末日聖徒は8.5%でした。一方で、無宗教者では16%、無神論者や不可知論者は19%となっています。

もちろん、この数字だけで宗教がうつ病を防ぐと、結論づけることはできません。

精神的健康には遺伝、生活環境、人間関係、経済状況など多くの要因が関わっています。

それでも、人生の困難な時期に、信仰を持つ人々が精神的な支えを得やすい可能性を示す結果と言えるでしょう。

信仰を持つ人は、苦難の中でも希望を見いだしやすく、祈りや聖典の言葉、同じ信仰を持つ人々とのつながりを通して力を得ることがあります。

宗教が心の健康に与える影響については、今後もさらに研究が進められていくことでしょう。

家族との強いつながり

今回の調査で特に興味深いのは、家族関係に関する結果です。

末日聖徒の94%が「母親から愛されていたと感じる」と回答し、90%が「父親から愛されていたと感じる」と答えました。

人生の満足度や幸福感を考えるうえで、幼少期の家庭環境が重要であることは多くの研究で知られています。家族から愛されているという感覚は、その後の人間関係や自己肯定感にも大きな影響を与えます。

宗教が直接そのような結果を生み出しているのかは分かりません。しかし、末日聖徒イエス・キリスト教会が家族を大切にすること、親としての責任を果たすこと、互いに助け合うことを教えているのは事実です。

信仰が家庭生活の土台の一部となり、家族の結びつきを強めている可能性は十分に考えられるでしょう。

人は意味と希望を求めている

調査では、末日聖徒の89%が「宗教や霊性から力や慰めを得ている」と回答しました。

人生には、自分の努力だけでは解決できない問題があります。

病気、失業、事故、災害、大切な人との別れなど、そうした出来事に直面したとき、人は「なぜこんなことが起こるのだろう」「これからどう生きればよいのだろう」と考えます。

そのようなときに、信仰は単なる知識ではなく、心を支える力になります。

神様への信仰、祈り、希望、同じ信仰を持つ人々と支え合うことなどの経験は、数字には表れにくいかもしれませんが、多くの人の人生を支えてきました。

わたしたちは人生の中で宗教を受け入れてそれを生活に生かす選択のような分かれ道が何度もある

データが示す一つの事実

今回の研究は、「宗教を持つ人の方が優れている」と主張しているわけではありません。また、「宗教が幸福の原因である」と証明したわけでもありません。

しかし少なくとも、人間が幸福に生き、人生を豊かにするために大切な要素の一部を、宗教が提供している可能性を示しています。

科学や技術が進歩した現代においても、人は意味を求め、希望を求め、誰かとのつながりを求めています。

そして世界最大級の調査は、信仰がそうした人間の根底にある願いに応える力を持っていることを、示唆しているのです。

参照:

Harvard Human Flourishing Program, Global Flourishing Study
https://hfh.fas.harvard.edu/global-flourishing-study

Justin Dyer, “Analysis: Harvard Global Flourishing study compares Latter-day Saints with people of other faith and no faith,” Deseret News, May 17, 2026.
https://www.deseret.com/opinion/2026/05/17/harvard-global-flourishing-study-latter-day-saints/