2026年6月、アメリカ国防総省が公開した軍人向けの宗教分類リストをめぐり、末日聖徒イエス・キリスト教会が「キリスト教」のカテゴリーから外されているとして、大きな議論が起こりました。

SNSやアメリカ国内のニュースでは「アメリカ政府が末日聖徒をキリスト教ではないと認定した」という趣旨の投稿も見られていますが、実際には少し異なります。

この記事では、何が起こったのか、なぜ議論になったのか、そして日本では教会がどのように扱われているのかを整理します。

アメリカの国防省

アメリカで何が起こったのか

問題となったのは、国防総省が軍人の宗教的所属を管理するための、これまで200以上あった宗教分類コードを31種類に整理したことでした。

新しいリストでは、

  • カトリック
  • バプテスト
  • メソジスト

など、多くの教派が「クリスチャン」に分類されました。

ところが、末日聖徒イエス・キリスト教会は独立した項目となり、「クリスチャン」という表記が付いていなかったのです。

このため、「政府は末日聖徒をキリスト教徒と認めていないのではないか」という批判が起こりました。

特にユタ州選出の議員たちは反発し、ほかのキリスト教系教派には「クリスチャン」という表記があるのに、末日聖徒教会だけが除外されているように見えると指摘した。

その後、国防総省は分類リストを修正しました。

修正版では末日聖徒イエス・キリスト教会を「クリスチャン」に加えるのではなく、逆にほかの教派からも「クリスチャン」というラベルを削除し、すべての宗教団体を個別名称のみで表示する方式に変更した。

国防総省は、政府機関が神学上の論争を裁定する立場にはなく、軍人の信仰を適切に管理することが目的であると説明しています。

つまり、この出来事は「アメリカ政府が末日聖徒をキリスト教ではないと宣言した」というものではなく、宗教分類の方法をめぐる問題だったのです。

なぜ議論になるのか

この問題の背景には、末日聖徒イエス・キリスト教会をキリスト教に含めるべきかどうかという長年の議論があります。

この議論は現在でも、SNSやインターネットで見ることができます。実際に信仰プラスにもこのようなコメントが届いています。

末日聖徒イエス・キリスト教会は、会員にはっきりとキリスト教徒であると教えています。

教会の正式名称そのものに「イエス・キリスト」が含まれており、礼拝や教えの中心もイエス・キリストです。

しかし一方で、一部のカトリックやプロテスタントの神学者は、歴史的な信条や教義との違いを理由に、末日聖徒を伝統的なキリスト教の枠組みには含めない立場を取っている方もいます。

例えば歴史家のデイビット・ベビントンは、クリスチャンは4つの核となる資質を備えていなければならない、と定義付けました。

  • 聖書を神様の言葉として信じること
  • 十字架の象徴を中心とすること
  • キリストに従うために改心し「生まれ変わる」こと
  • 積極的に福音をほかの人々と分かち合うこと

そのため、「末日聖徒はキリスト教徒か」という問いは、単なる宗教分類ではなく、神学的な議論として長年続いてきました。

末日聖徒はモルモン書を聖典としていると勘違いされるが、聖書も神聖な書物として信じその言葉を学んでいる

末日聖徒イエス・キリスト教会は何を信じているのか

末日聖徒イエス・キリスト教会は、イエス・キリストを人類の救い主であり贖い主であると信じています。

教会員は、

  • イエス・キリストが神様の御子であること
  • 十字架上で全人類のために苦しみを受けたこと
  • 死後に復活したこと
  • 信仰と悔い改めを通して救いが与えられること

を信じています。

また、聖書を神様の言葉として受け入れ、信じ、学んでいます。

さらに、教会は『モルモン書』も神様から与えられた聖典であると信じています。

モルモン書はイエス・キリストについて証するもう一つの記録であり、教会では聖書とともに学んでいるのです。

末日聖徒の信仰を簡潔に表したものとして、「信仰箇条」があります。その第一条には次のように記されています。

「わたしたちは、永遠の父なる神と、その御子イエス・キリストと、聖霊とを信じる 。」

また、第三条では、

「わたしたちは、キリストの贖罪により、全人類は福音の律法と儀式に従うことによって救われ得ると信じる。」 

と宣言しています。

つまり、末日聖徒イエス・キリスト教会にとって、イエス・キリストは信仰の一部ではなく、教会の信条の中心そのものなのです。

末日聖徒がキリスト教徒である理由

ベビントン氏の定義を見ると、末日聖徒はモルモン書も聖典として信じ、十字架をあまり身につけません。

この件で本当に問うべきは、「クリスチャンであるかどうかを判断する基準となるリストは本当に存在するのか?」ということです。

もしそのようなリストが存在するとして、それを人間が定めるのは正しいことなのか、ということです。

誰かを「クリスチャン」とみなすことができるのは救い主だけなのではないでしょうか。

しかし、救い主でさえ、クリスチャンであることの意味を定めたリストは作られませんでした。

キリスト教徒を定義する唯一の、そして不変の要素は、キリストの道における愛であるべきではないでしょうか?

救い主はわたしたちに、隣人を自分自身のように愛しなさいという戒めを与えられました。(ヨハネによる福音書第13章34-35節

ですから、わたしたちがその愛をもって行動しようと努めるならば、わたしたちはキリスト教徒であるのです。

日本政府はどう扱っているのか

日本の場合、アメリカとは事情が異なります。日本政府は宗教の教義や正統性を判断しないという原則を取っています。

宗教法人制度は、その団体が法律上の要件を満たしているかどうかを扱う制度で、

  • キリスト教かどうか
  • 正統派かどうか
  • 教義が正しいかどうか

を判断するものではありません。そのため、日本政府が「末日聖徒イエス・キリスト教会はキリスト教である」、あるいは「キリスト教ではない」と公式に決定しているわけではありません。

法的には、末日聖徒イエス・キリスト教会は認証を受けた宗教法人として活動しています。また、文化庁の『宗教年鑑』などの統計では、一般にキリスト教系団体として分類されています。

ただし、これは神学的判断ではなく、あくまでも行政上の分類です。

まとめ

これまで述べてきたすべての点から、末日聖徒イエス・キリスト教会が紛れもなくキリスト教であると、そして教会の会員たちはキリスト教徒だと断言します。

ほかの教派とは神学的な違いがあるかもしれません。しかし、間違いなく神様とイエス・キリストを信じており、ほかの教会と同じように、これらが信仰の中心となっています。