まゆみさん(仮名)は中学2年生です。教会で家族の歴史を調べるように勧められていますが、それをする大切さをあまり感じられず、なかなか始められずにいました。しかし、彼女のお母さんは、最近戦争の話や昔の子育てについておばあちゃんに聞いてみたいけど、ずいぶん前に他界してしまったので、もうできないと話していました。そこでまゆみさんは、自分のおばあちゃんが元気なうちに話を聞こう、と思ったのです。今回はおばあちゃんが自分と同じ年代の頃、どんな様子だったのかを中心に聞いてみました。
事前準備
まゆみさんのおばあちゃんは仕事をしているので、話を聞くために都合のいい日をお母さんに聞いてもらいました。また、おばあちゃんは遠くに住んでいるので、会って話を聞くことはなかなか出来ません。なので、電話をすることにしました。そして、何を聞いてみたいか自分の考えをまとめるために、質問を事前に用意してインタビューに備えました。まゆみさんが準備した質問は次の通りです。
想像以上のおばあちゃんとの電話
約束していた日に電話をしました。いつもはお母さんがおばあちゃんと電話している時に少し話すくらいだったので、まゆみさんがおばあちゃんと話すためだけに電話をしたのは初めてだったかもしれません。事前に電話をする約束をしていたので、おばあちゃんはすぐにたくさん話してくれました。まゆみさんが予想していた通り、おばあちゃんが中2だった頃と今の自分の生活とは違うところがありました。その時代は当然スマホはなく、おばあちゃんの家にはテレビが置いてありませんでした。家が農家だったので遊ぶことはほとんどせず、学校の時間以外は農業を手伝っていました。学校の1つのクラスには40~50人がいましたが、男の子とは一切しゃべることが無かったそうです。おばあちゃんの周りでも、男の子と話す女の子はいませんでした。そしてクラスの半分くらいしか高校に進学せず、残りの半分は就職していました。まゆみさんが経験している中学生の様子とは全然違いました。
しかし共通点もありました。おばあちゃんはマンガが好きで、マンガばかり読んでいたようです。それはまゆみさんと同じです。まゆみさんはマンガが大好きです。おばあちゃんはマンガを買うために、近所の人の農作業を手伝ってはお金を貯めてマンガを買っていました。まゆみさんはお父さんからもらったお小遣いを貯めてマンガを買っています。マンガに夢中になっていたことをおばあちゃんから聞いて、まゆみさんは嬉しくなりました。
おばあちゃんの過去と繋がった自分の知識
おばあちゃんは、中2だった頃の世の中についても教えてくれました。その頃は東京オリンピックの2年前でした。おばあちゃんの周りにも東京まで働きに行っていた人がいました。高速道路も新幹線もできました。世界ではベトナム戦争の真っ只中でした。まゆみさんはそれらはテレビで見たり、偉人の伝記で読んだり、授業で習った内容だったので知っていましたが、おばあちゃんという一人の人の過去が自分の知識と繋がり、おばあちゃんの歴史も世の中の歴史も一気に身近なものになりました。
おばあちゃんの歴史=家族の歴史
中2のころのおばあちゃんは、国が部活に入るように方針を出したので、水泳部に所属しました。その後中学を卒業し、働きながら高校に通いました。そして仕事を続けながら短大を卒業し、就職しました。その頃友人と一緒に末日聖徒イエス・キリスト教会の英会話へ行き、宣教師と出会い、教会の勉強をしました。おばあちゃんは教会の教えに共感を得て、教会に入りました。その後、教会の活動でおじいちゃんに出会い、結婚してまゆみさんのお母さんが産まれたのです。おばあちゃんのやってきたこと、選んだことが時間をかけて確実にまゆみさんに繋がるということを感じました。おばあちゃんの過去は、まゆみさんとまゆみさんの家族の大切な歴史の一部であることに気が付きました。
深まる孫と祖母の関係
まゆみさんとおばあちゃんは1年に1度会うくらいなので、おばあちゃんの昔の話をゆっくり聞いたことがありませんでした。しかし、今回電話で1時間近く話すことで、おばあちゃんのことがとっても近くに感じることができました。おばあちゃんは冗談を交えながら、昔のことを詳しく教えてくれました。おばあちゃんは、まゆみさんとまさかこんな話ができると思わなくて、まゆみさんの成長を感じたと同時に、自分の過去も思い出してとても楽しくなりました。会う回数が少なくても、電話で話し、自分のことを伝えることで、距離や年齢差は問題ではなくなり、より良い関係を築くことができます。まゆみさんは今後、おじいちゃんとお父さん方のおじいちゃんおばあちゃんにも、同じように話を聞こうと計画しています。みんな育った場所が全然違うので、4人の違いと共通点も見つけられるのではないかと、ワクワクしています。
家族の歴史を知る理由
冒頭でもお伝えしたように、末日聖徒イエス・キリスト教会は、全ての教会員に自分の家族の歴史を調べるように勧めています。それは先祖を救うため、神殿で身代わりの儀式を受けられるように準備するためです。また、会ったこともない先祖について調べることで、先祖に対する想いを強くし、愛を深めることができます。そして自分のルーツを知ることができ、自分自身をも愛することに繋がります。しかし、それは亡くなった先祖に対してだけでなく、祖父母や伯父伯母(叔父叔母)、親戚を知ることによっても同じです。自分の親族が生きていて話を聞けるなら、時間を取ってその人の過去の話を聞くことをお勧めします。アラン・F・パッカー長老はこう話しています。
「家族歴史とは、系図とそれに関するきまりごとや、名前や日付や地名以上のものであり、過去に目を向けること以上のものです。わたしたち自身の歴史を記すとき、家族歴史に現在も含まれます。子孫を通して未来の歴史を作るとき、未来が含まれていきます。例えば、子供に家族のエピソードを語り、写真を見せる若い母親は、家族歴史活動を行っているのです。
聖餐を受け、集会に出席し、聖文を読み、個人の祈りを行うのと同じように、家族歴史と神殿活動は、わたしたち個人の日常的な礼拝の一部であるべきです。預言者の勧めに対する青少年やその他の人々の姿は、わたしたちを鼓舞し、あらゆる年齢層の全ての会員がこの業を行う能力と義務があることを示しています」
会ったことのない先祖について調べる時も、自分よりも長く生きている家族や親戚の昔の話を聞く時も、お互いに大きな喜びを感じる機会となります。亡くなった先祖もそうに違いありません。そして家族の歴史を調べることで、きっとこれまで知らなかった家族の一面を知ることができることでしょう。そしてその話が、今後のあなたの人生の助けや導きになるかもしれません。
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