断食(ファスティング)はダイエットを助けたり、健康になるためだけの方法だと思っていませんか?末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は定期的に断食をして、精神的なメリットも得ているんです。何より断食は、皆さんの祈りをより強く効果的にしてくれます。そんな断食の方法についてご紹介します。

身体にいい断食

そもそも生き物は食べなければ生きていけないはずなのに、なぜ断食が体にいいのでしょうか?そこには大きく分けて3つの理由があるそうです。

①内臓が休まる

食べない時間が内臓の休憩時間となり、疲れた内臓の働きが良くなります。

②身体の脂肪を分解してエネルギーになる

食べ物から栄養を取ることができないので、肝臓に蓄えられてあったグリコーゲン(体内で作られる炭水化物の一種)を使用します。それも使い切ると内臓脂肪を分解してエネルギーに変わります。

③細胞が内側から生まれ変わる

断食によってオートファジー(細胞内の古いたんぱく質などを分解する仕組みのこと)が作用し、細胞が生まれ変わります。これはあらゆる生活習慣病だけではなく、感染症などの予防効果や、肌や筋肉の若返りに効果があります。

参照元:青木厚. ”「16時間はなにも食べるな」最新医学が勧めるプチ断食の3大効能”. PRESIDENT Online. https://president.jp/articles/-/43358?page=2

この著者は記事内で、16時間の断食を勧めています。無理なくできる方法として勧めていますが、体内に食べ物が一定期間入ってこない状態が身体を健康にするなんて、なんとも興味深いですよね。そして断食は身体だけではなく、心を清く健康にしてくれるんです。

断食の歴史

歴史を辿ると、紀元前から様々な宗教で断食は行われてきたようです。新約聖書のルカ書では、キリストがご自身の模範を通して、断食の重要性を教えておられます(ルカ4:1-4)。

LDS.orgの「断食」についての説明は、断食の歴史や、なぜ人々は遠い昔から断食をすることを選んできたのかについて理解するのを助けてくれます。

「断食は古代より、神の預言者や主の教会の会員が行ってきた習わしです。旧約の時代、モーセとエリヤは断食しました(出エジプト34:28;列王上19:8参照)。イスラエルの民の場合、断食は天の助けを得るためにしばしば実行されてきました。新約の時代には、イエス・キリストは40日40夜断食し、御自身の教導の業に備えられました(マタイ4:1-4参照)。主は弟子たちに、断食の力とその大切さについて教えられました。」

断食は犠牲を象徴しています。食べることを主に捧げるのです。また、飲食を断っている時間に主を思い起こすなら、霊的に研ぎ澄まされる感覚を経験することでしょう。また、断食は謙遜さを身につける助けにもなります。

実際に、食事をしていない適度な時間が身体を元気にさせているので、わたしたちの精神を司る霊も元気になって鍛えられる、ということは、納得できます。

末日聖徒がする断食の方法

末日聖徒イエス・キリスト教会では、毎月第1日曜日を断食のための日曜日と定めています。この日曜日を、断食日曜日、または断食安息日といいます。

会員たちは、2食もしくは24時間ほど、飲食を断ちます。この日曜日はほかの日曜日よりも特別になります。普段の聖餐会では、聖餐の儀式と割り当てられた人が壇上からその日のために決められた福音のテーマのお話をします。

しかし、断食安息日は、誰でも証を分かち合いたいと思った人が、進んで壇上に上がり、イエス・キリストや福音、教義について証をします。

また、第1日曜日に限らず、自分が断食を行いたいと思った時に、断食をすることができます。ただし、断食では謙遜な心が大切です。空腹に堪えて頑張って断食していても、人にそれをアピールすることは相応しくありません。SNSに「ただいま断食中。めっちゃキツイ!」なんて投稿もするべきではありませんね。

そして、この断食は健康のためのファスティングではあまり行われない1つの行動で始めて終わります。それは祈りです。

断食は祈りによって始め、祈りで終わらなければ意味がないと言っても過言ではありません。祈りは、わたしたちの人生で、神との関係をずっと持ち続けるために、一番大切な手段です。そして断食と一緒に行うことで、力強いものになります。

末日聖徒の断食の方法


祈りの力を強くする断食

ジョセフ・B・ワースリン長老は祈りと断食の関係について、このように教えています。

「祈りのない断食は完全な断食ではなく、単に空腹になるだけにすぎません。 断食を食物を取らずに済ます以上のものとしたいのであれば、心と思いを高め、声を上げて天父と交わらなければなりません。 断食に心からの祈りが加わると、それは力強いものとなります。 自らの思いを御霊の啓示で満たすことができます。 そして誘惑を受けるときに、それらに対抗できるようわたしたちを強めてくれます。」(「断食の律法」2001年4月の総大会)

祈りによって断食を始める時に、自分が願っていること、望んでいることを祈ることができます。断食をただの忍耐にするのではなく、目的がある行動にすることができるのです。

断食は「神を礼拝し、神に感謝を表す方法」にもなります。そして「神の前にへりくだり、イエス・キリストに対する信仰を行使しようと懸命に努力するときに断食をすることができます。」(「断食と断食献金」より)

ある1人の女の子の経験を紹介します。

その子はおばあちゃんの具合が良くなるために、断食をしようと決意していました。しかし、成長期で貧血になることが多く、医師から断食をしないようにと、断食をする前の日に言われたのです。断食をする決意がとても固かったので、彼女はとても悔しくて泣きました。

その様子を見た両親は、娘の体調が少しでも悪くなったら、断食を止めて食べることを条件に、娘の断食を許可しました。両親は、娘がおばあちゃんのために断食ができるように、断食しました。

すると、娘は日曜日の断食中に、「お母さん、まだ大丈夫。できるよ。」と言って、2食抜いても貧血を起こさずに断食をすることができました。そして、おばあちゃんの具合はその後、回復に向かったのです。

これは1つの例です。また、この女の子が考えて導き出した自分ができる方法です。妊娠や授乳中、病気など健康に問題がある場合、断食をすることは勧められていません。幼い子供に断食をさせることも求められていません。毎月第1日曜日以外も断食できる、と先ほどお伝えしましたが、頻繁に断食をして体調を崩してしまっては意味がありませんので、そこはぜひ気を付けてください。

しかし、この話はその女の子の両親の見守りと協力、また両親の娘を思っての断食によって得た経験です。彼女と同じことをすればすべての人が同じ結果を得られることを保証しているものではありません。

ほかにも、友人関係に悩んだ学生が母と一緒に断食をしたり、知人の体調のためや、友人の悩みのために断食をすることもできます。自分の受験や進学、就職、結婚のために断食をする人もいます。

そして、断食は1人でもできますが、家族や友達、教会のワードなどグループでも断食をすることもあります。断食安息日では、個人的なことに関して断食したり、ワードなどで同じ目的を持って断食をすることもできます。

2020年4月、末日聖徒イエス・キリスト教会の指導者であり生ける預言者、ラッセル・M・ネルソン大管長が、宗教を超えた祈りと断食に世界中の人々を招待しました。これは、新型コロナウイルス感染が世界中に拡大し、多くの人が苦しんでいる中で目的を1つにして祈りを捧げるというものです。その結果、様々な宗教を信じる13億人が参加しました。宗教という垣根を超えて、13億人という大きなグループが1つの目的、「コロナウイルス感染拡大の収束」を願って祈り断食をするというのは、奇跡ですね。

グループで断食をすることが効果的な理由

祈りは神様と自分の会話であるという表現を聞いたことがあります。その言葉の通り、とても個人的なものです。しかし、同じ目的を持ってグループで祈り断食する時に、1人で祈り断食することとは別の祝福を得ることができます。

1.心強い
1人で断食をすることが難しいことが時々あります。ものすごくお腹が空いたり、食べ物の誘惑があったり。でもそんな時、同じ時に同じ目的で断食をしている人がいると、「あの人も頑張っているんだから自分も頑張ろう」と励まされます。孤独ではなく、心強さを感じます。

2.1つになれる
これは断食に限らないかもしれません。運動会や大きなプロジェクトをグループで取り組むと、そのグループが1つになる経験をしたことがある人もいることでしょう。

断食という霊に関わるイベントを通して1つになった時、そのグループの絆は強くなります。家族や友人同士、宣教師が伝道を担当するエリアの伝道部、教会のワードやステークなども一つになれます。先述した世界規模の断食も、感染症によって世界が分断される中でも、人々は想いを一つにすることができました。

3.祈りが強くなる
末日聖徒イエス・キリスト教会のHPに、このような記載があります。

「断食は祈りに真剣さを増し加え、導きを求める祈りはさらに力強いものとなる。」(神権の義務と祝福:神権者のための基本図書 A 「断食と祈り」)

1人の祈りが断食で強くなるのなら、複数人が同じことについて祈り断食する時には、更に強くなります。1本の柱で建てるテントよりも多くの柱のあるテントの方が強度が増すような感じです。祈りたい問題が深刻だったり、1人で断食をすることに不安があるのなら、誰かに一緒に断食するように依頼することができます。

しかし、忘れないで欲しいのが、断食は強制で行うのではありません。自分の意思が必要です。親やグループのリーダーが断食を提案することはできますが、無理やり断食させないようにしましょう。

断食献金について

末日聖徒イエス・キリスト教会では、断食中に食べなかった食料分、またはそれ以上の金額を断食献金として寄付するように勧められています。断食をした教会員の断食献金は、地域の教会を管理するビショップに集められ、貧しい人や困った人を助けるために使われます。手数料や教会の建物のためなどには使われません。

「ビショップは、物質的な支援を受ける必要のある人はだれか、そしてどのように援助すべきかを判断します。」(「断食と断食献金」より)

もし自分の住んでいる地域に、この断食献金によっての支援を必要としている人がいないなら、ほかの地域の人のために使われます。

貧しい人や困っている人を助けることは戒めです。

「貧しい者はいつまでも国のうちに絶えることがないから、わたしは命じて言う、『あなたは必ず国のうちにいるあなたの兄弟の乏しい者ものと、貧しい者とに、手を開かなければならない』。」申命記15:11

そして、教会員は断食献金を納める事によってこの戒めを守っていることになるんです。

ディーン・M・デイビーズビショップはこのように話しています。

「…末日聖徒 イエス・キリスト教会の会員は、聖約を交わし、戒めを守る民です。わたしは、忠実に律法を守る人にとって、断食の律法以上に守りやすく、大きな祝福をもたらしてくれる律法や戒めを他に思いつきません。」

実はこの戒めによる一番の祝福は自分に訪れます。しぶしぶ行うことでは得られない祝福です。自身の霊的な成長を感じることができるかもしれません。神様の戒めに従順であることによって得られる安心感と喜びがあるでしょう。

断食も断食献金もわたしたちが神様に信仰を表すことができる方法の1つです。食べることを我慢したり、その我慢したことによって浮いたお金を人のために使うことは難しいと感じるかもしれません。しかし、断食も断食献金も行ってみると、自分が想像した以上の守りと導き、そして祝福が与えられます。末日聖徒イエス・キリスト教会の会員の中には、そのような経験をした人がたくさんいます。一度、第1日曜日に教会を訪問して、教会員の話を聞いてみるのもいいかもしれませんね。

※現在(2021年9月)は新型コロナウイルス感染対策のため、オンラインで日曜日の集会を行っているワードや支部もあります。お近くの教会堂はこちらから検索できます。

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また、こちらの動画もぜひご覧ください。