母親の幸せな瞬間

すべての母親は、自分の子供が世界のなかに居場所を見つけることを節に願うものです。しかしながら、その同じ心が、子供が人生の旅を始めるにあたって世界に出て行くのをやるせない気持ちで見つめるものです。

 

子どもの成長を見届ける母の心

過去二年間、わたしは喜びをもって、人々を助けるために上の子供たち二人を海外へ送り出してきました。喜びで宙返りしそうな気分と同時に、彼らが大人の靴に足を入れ、大人の責任を身に受けるのをみて、わたしはまるで心が引き裂かれるような思いも感じていました。わたしの涙は複雑な思いのあらわれでした。喜びと痛みの混じった思いです。

わたしは、子供を戦争に送り出す母の心はどんなものだろうかと考えました。とてもたくさんの母親たちが、助けの必要な人を助け、紛争をしずめようと出て行く子どもたちにキスしながら、名誉と悲しみの入り混じったバッジを胸につけたことでしょう。

母の心は、社会でなによりも優しく、力強いものです。昔ながらの物語や歴史は、力強い方法で子供を愛し、子供のために嘆く母親たちであふれています。アビゲイル・アダムス若草物語の母親、そしてキリストの母親マリアのことを考えてみてください。

わたしたちが「母」と呼び社会的によく知られ、力を持つ人物たちへの賞賛に対する軽蔑と同様に、人々が明らかに母親としての努めをさげすむようなときは、わたしたちは自分自身にこう尋ねるべきかもしれません。母の心からもたらされる強さとまもりなくして、わたしたちはどこへ向かうのか、どんな人物になっていたか、と。

わたしたちの実の母親たちは、完璧ではなくとも、わたしたちを愛し、わたしたちのために痛みを感じ、祈り、わたしたちを教えてくれました。彼女たちの心が、わたしたちがいつもより良い選択をするよう導き、なにも心のよりどころがない時でさえ安心を感じさせてくれました。わたしたちの年齢や母の心の年齢に関わりなく、わたしたちは母の心に強さを学び、真理を求めました。愛ある母の心が人の人生に及ぼす影響に代わるものはなにもありません。

母親がいつもそこにいたわけではないという人もいると思います。もしそうだとしても、他の母親がわたしたちに与える影響の大きさを否定できる人はいないはずです。母親の養いの心がもたらす愛と安心に対するあこがれの気持ちだけでさえ、人生と価値観を永遠にわたり向上させてくれます。

 

強い母親  

わたしはある素晴らしいモルモン教の母親を知っています。彼女の母としての人生の中で最も困難だった時のことを話します。6人の子供の母として、彼女はいつも子どもたちを教え、正し、キスし、愛し、彼らのために祈りました。

第二次世界大戦中、彼女は若い女性だったので、身体的と精神的な大変さについては自身の経験から学びました。

戦時中多くの女性は、兄弟たち、夫たち、いとこやおじさんたちが生きては帰ってこないだろうということを知っていました。しかし、第2次世界大戦は兵士たちが戦う中で最も大切な戦争ではありませんでした。残された家族や殆どの米軍兵士たちにとって、本当の戦いは正義と悪の間、または善悪の間での戦いでした。もし彼らの息子が正義を選んで清く正しい人生を送っていたのなら、彼が戦争で殺されたとしても彼は勝ったのです。

この母親は、そういった清く正しい男性と結婚し、こどもたちに良い人間になる方法を教えて育てました。子供たちはまた清く正しくいる方法についても教わりました。

一人、また一人と彼女の子供たちは彼女の守りの手から離れていきました。彼らを見送りながら、彼女の心は誇りと苦痛にふくれあがりました。ほとんどの子どもたちは幸せと自由につながる道を選びましたが、一人のこどもはそうしませんでした。

彼女は、若い娘が悪い友達をつくるようになり、のちに彼女を悲しみと葛藤に導くこととなる活動に参加し始めるのを目の当たりにしました。しばらくの間、彼女の娘は人間関係を傷つけ、彼女自身の良くない行動の結果に苦しみました。

それから、娘は道を踏み外した時と同じくらい早く、自分自身で正しい道に戻ってきたのです。彼女はより幸せな、そして信念に基づいた人生を送ることに献身するようになりました。

 

子どもを助ける最善の方法

この母親が、親として一番つらかった時の話としてこの話をわたしに聞かせてくれた時、わたしは彼女に質問をしました。彼女が娘の試練の間、どのように娘を助けたのかを聞きたかったのです。

今は白髪で灰色の目をしたこの女性は、わたしの目と心をしっかりと見つめてこう言いました。「彼女を愛したのよ。愛することをやめたことは一度もなかった。彼女がどんなに悪いことをしようと、彼女に愛を注ぎ続けたの。娘がしたことすべてに賛成はしなかったけれど、愛することをやめなかった。彼女もそれを知っていたの。」

この年老いた女性との何年も前に交わされたとてもシンプルな会話は、わたしが今までに学んだ中で一番深い教えを与えてくれました。母の心は、母にとって一番の道具なのです。母の心は関係性や家庭環境のあり方を決め、全ての人を彼女が教える真理に導きます。もうひとつわたしが学んだのは、母親がどんなに頑張っても子供が道を踏み外すことはあるということです。しかし、母親の心は常に気まぐれな子供を家に呼び戻すことができるということを学びました。

つらい時、母の心は人を導いてくれます。心が、母親の一番いとしい部分なのです。

 

この記事はニコリーン・ペックによって書かれ、ldsmag.comに投稿されたものです。翻訳者はキャンプベル愛美です。