生きていることが辛いと感じたことがある人がたくさんいることでしょう。身近な人が自分で死を選んだという経験をしたことがある人もいるでしょう。実際、死にたいと思う気持ちはまれなものではなく、多くの人が抱いたことがあります。だからと言って自殺は止められないことなのでしょうか?この記事を通して自殺について知ってほしいという思いがあります。それは、知ることによって自殺を止めて、悲劇を避けられる可能性があるからです


相談が助けになる

厚生労働省の調査によると、自殺をした人(自殺未遂者・自殺既遂者=自分を傷つける行為で死に至った人))のうち、事前に誰かに死にたい気持ちについて話したことがあるのは、2割だけだったそうです。苦しい思いを抱えていても誰にも話さない理由は「相談しても問題は解決しない」という思いがあるようです。しかし、相談=解決ではなくても、相談=ガス抜きにはなります。モヤモヤした思いや悲しさなどは、自分1人で抱えると大きな負担になります。誰かに愚痴ったり話すことで冷静さを取り戻したり、違った見方ができるようになり、問題を解決したり回避できたりすることもあります。決して無駄なことではありません。


衝動を落ち着かせる

死にたいと思う気持ちと、実際に自殺することは違います。いつも死にたいと思っているからと言って、それがすべて自殺に繋がるとは限りません。では、何が自殺を引き起こすのでしょうか。もちろん悩み事やストレスなども関係がありますが、そんな中でいきなり爆発するあるエネルギーが引き金です。このことを「自殺衝動」といいます。「もう今死にたい!!」という気持ちがいきなりわきおこり、そのまま行動してしまうことです。しかし「自殺衝動」は長くは続きません。ピークは5~10分と言われていて、誰かと30分ほど話していると落ち着きます。ですから、誰かに話すことがとても大きな助けになるんです。心が沈む、死ぬことについて考えてしまう、そんな時はなるべく一人にならないようにします。すぐそばに誰もいない、誰に話していいか分からない、そんな人のための電話やLINEがあります。電話することをためらう必要はありませんよ。

 

・いのちの電話こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)

 

チャットでも相談できます。

相談受付用のアカウントを登録・フォローしてください。

・LINE:@kokorohotochat

いのちの電話心の健康相談LINEQRコード

ほかのSNSにもチャット式相談窓口があります。


生活リズムを整える

WHOによると、自殺をする人の約97%が何らかの精神障害の診断が付く状態だったと言います。自殺について考える人も、病院で診断がつくほどのうつ状態である可能性が高いです。悩み事や問題、病気やホルモンバランスなどから、心がうつ状態になる原因はいくつもあります。しかし、心も体も健康になる方法の一つに生活リズムの改善があります。十分な睡眠、適度な運動、そして朝の散歩が効果的です。朝の散歩が難しい場合は、いつも決まった時間に起きてカーテンを明けて朝日を浴び、外の空気を思いっきり吸うだけでもいいです。うつ状態はセロトニンという脳内の神経伝達物質の低下が原因で起こります。朝起きて目から光を取り込むことで、脳が起きてセロトニンの分泌が増えます。また、早起きして朝日を浴びることは、もともと25時間の体内時計をリセットすることができます。規則正しい生活と朝の活動は実際にうつ病の治療にも効果があるんです。ある精神科医の経験では、規則正しい生活をしている人で、「死にたい」と言う人に出会ったことがないそうです。ただ、注意してほしいことは、うつ病を患っている人が必ず自殺をするということではありません。また、明るく元気な人は絶対に自殺しないということでもありません。

心も身体も健康になる3つの方法

心も身体も健康になる朝の3つの習慣


自殺を選ぶ前にできること

楽しみを見つける、好きなことをする

日々の楽しみは体とそして心を元気にし、希望を与えてくれます。大きなイベントである必要はありません。小さな楽しみでも毎日あったらきっと1日は素敵になります。例えばそれは今日の夜ごはんでもいいです。季節ごとに変わる新作コンビニスイーツを楽しみにすることもステキです。大好きなマンガの新刊も希望を与える楽しみになります。新しいペンを買って好きな絵を描くこともそうです。好きな俳優が出ているドラマや映画を観ることも、新しい靴で出かけることも、小さなことですが積み重なると幸せをもたらしてくれます。何かを楽しみにしていている時、そして好きなことをしている時、辛いこと苦しいことを一時的でも忘れることができます。そんな気分じゃなくても、とりあえず悩んでいることと関係ないことをやってみることは、心を少しだけ軽くしてくれることでしょう。そんなことの繰り返しが、生きることに希望を与えてくれます。

環境を変える

好きなことや楽しみでは気分が上がらないというのなら、思い切って環境を変えてみることも一つの方法です。例えば職場が辛いなら、思い切って辞めてみることもできます。辞めてどうするかは、その後道が開けるでしょう。悩み続けてそこで人生が終わってしまくらいなら、辛い状況から自分から離れてもいいんです。人によっては「逃げる」ように感じるかもしれません。ハンガリーのことわざに、「逃げるは恥だが役に立つ」というものがあります。問題に向き合わなくて逃げることは恥ずかしいけど、でもそのおかげで一番いい方法が得られる、という意味があります。苦しいことから逃げることで、あなたが生きていられるなら、こんなに嬉しいことはありません。むしろ「逃げる」ことは「恥ずかしい」ことではなく、きちんと状況を把握し対応できている、と言えます。

誰かの助けになる

周りで苦しんでいる人を助けることも、気持ちを変える助けになります。小さなことでもいいです。地域のボランティアに参加することも有効的です。誰かと関わったり、ほかの人への手助けになることを考えたり行動したりすると、気持ちが前向きになります。自分の辛い思いを一時的でも忘れることができます。もしかしたらその助けが感謝されるかもしれません。そんな経験が喜びをもたらしてくれるでしょう。そして自分がどれほど価値がある人間か分かることでしょう。しかし、自分自身が困難の中にあるので、ほかの人に助けの手を伸ばすのは難しいかもしれません。その時は主イエス・キリストを思い起こしてください。キリストは十字架上で、試練の中にいる母親であるマリアに愛ある奉仕の言葉をかけました。アイリング管長はこのことについて次のように話されています。

「現世では自分を証明する機会が十分に与えられています。救い主と天の御父と似たものとなるために一人一人が厳しい試しを経験します。また、人の艱難に気付き助けようとしなければなりません。自分自身も試しのさなかにある時は、特に難しいことです。

しかし、たとえ少しだけでも誰かの重荷を軽くする時に、わたしたちの背は強められ暗闇の中に光を感じられるようになるのです。主はこの点において手本であられます。……地上に生を受けるすべての人のために苦しみながら、主は十字架上からヨハネに悲しみに暮れるご自身の母親に目をやり、試しのさなかにある母にお遣いになりました。」(この場面はヨハネ19:25-27になります。)

自分の気持ちを知る

自分の気持ちは自分が一番よく知っていることでしょう。普段から心の状態を知っておくとどういう時に辛くて、どうしたら元気になれるかが分かります。死にたい気持ちが心にあったら、それを否定しないで、自分は今そんな気持ちなのか、と受け入れてください。心が元気な時に、自分の気持ちを書いたり話したりするようにするといいでしょう。死にたい気持ちを抱えたらどうするか考えておくのもいいかもしれません。相談相手や気分転換の方法を考えておいたり、電話相談やチャット相談について知っておくこともいいですね。悩みや苦しい気持ちに対して誰かに助けを求めることは迷惑ではなくて、相手にとっても相談してくれて良かった、と感じることも知っておいてください。


周りの人の接し方

もしあなたが誰かから死にたいという話を聞いたら、驚いたり怖く思うことがあるかもしれませんが、その相手の気持ちにどうか寄り添ってください。「そんなこと言わないで」や「生きていた方がいいことあるよ」といきなり言うことは避けてください。あなたは励ますつもりかもしれませんが、相手のその時の気持ちを否定することに繋がりかねません。「悲しむ人がいるよ」という言葉もプレッシャーになる可能性があります。LDSファミリーサービスの臨床心理博士、下川健一さんは自殺する人のサインを教えいます。

  • 自傷あるいは自殺をすると話している。
  • 自殺する方法や手段を探している。
  • 死や死ぬこと、自殺について語ったり書いたりしている
  • 絶望感や、生きる目的の喪失感を口にしている。
  • 激しい怒りをあらわにしている、あるいは復讐を企てている。
  • やけを起こしている。
  • 追い詰められていると感じている。
  • 飲酒や薬物使用の頻度が増している。
  • 友人や家族、社会から引きこもっている。
  • 不安や動揺を感じている、あるいは気分の変動が著しい。
  • 眠れなくて苦しんでいる、あるいはいつも寝ている。
  • 自分は他の人々にとって重荷だと感じている。

はっきりと「死にたい」と口にしないとしても、何かしらそのサインがあるということです。

そして、周りの人ができる予防もあります。

  • 愛をもって手を差し伸べ、耳を傾ける

レンランド長老は、神がその人をご覧になるように愛を持って相手を見ることで、その人が悩んでいることなどに気付くことができる、と言われました。

  • 具体的な事柄について助ける

例えば、相手が失業で自殺を考えているなら、仕事探しの助けになることで死を選ぶことがなくなるかもしれません。ただし、相手がその助けを受け入れることが大切です。

  • 自殺を考えていないかどうか尋ねる

率直に聞くことで、悩みをもっと話してくれるかもしれません。そんな選択肢が消えるかもしれません。自殺について聞くことはそれを促すことにはなりません。

  • その人と一緒にいて、他の人から助けを得る

もし死にたくなるくらい悩んでいると打ち明けてくれたら、話を聞いて、必要なら電話相談や精神科の相談窓口などに連絡できるように手伝いましょう。


大切な人を亡くして苦しんでいる人の支えとなる

今回お伝えしたことは、今まさに苦しんでいるあなたにも、そんな人が周りにいるあなたにも是非活用して欲しい情報です。身近な人が悩んで苦しんでいるのを知っている、または死を選んで悲しみに押しつぶされそうという人にも、助けが必要です。もしそんな人を知っているなら、次のことを参考にしてください。

  • 思いやりと理解を示す。
  • 簡単なことでもよいので助けを申し出る。
  • 様々な活動に一緒に参加する。
  • 忍耐強く話に耳を傾け、気持ちを打ち明けられたら受け入れる。
  • 「大丈夫ですよ」「この程度で済んで良かった」「すべては時が癒してくれます」「わたしには分かりますよ」などといった、うわべだけの励ましを与えない。
  • 亡くなったのは自分のせいなのか、死を選んだ人が何を考えていたのか、など誰も答えることができない疑問に答えようとしない。
  • あなたに責任はないと言って安心してもらう。
  • 故人について遺族と話すときには、自殺とは別の原因(年齢を重ねて亡くなるなど)で亡くなった人について話すのと同じように話す。腫れ物に触るようにするのではなく、一緒に故人との思い出などを話したりする。
  • 悲しみを乗り越えるためのほかのリソースが見つかるように助けると申し出る(カウンセリング、支援グループなど)

死を選ぼうとしている人にとって、誰かと話すことが有効であるように、自殺をした人のことを想って悲しみ苦しんでいる人にも、人の助けや会話が必要です。


福音と自殺


自殺してしまった人はどうなるの?自分で自分を殺したから罪なの?末日聖徒イエス・キリスト教会のホームページには、
自殺について次のように書いてあります。

「自分自身の命を絶つことは間違ったことですが、自殺をした人が自らの行いに必ず責任を負うことになるかどうかは分かりません。神のみがそのような事柄を裁くことがおできになるのです。」

また、ブルース・R・マッコンキ―はこのように言いました。

「自殺は自らの意志で、意図的に自分の命を取ることです。とりわけ当事者が、責任が取れて、精神が健全である場合です・・・。ひどいストレスのもとにおかれると、自分のコントロールが利かなくなり、精神に雲がかかったような状態になり、自分で自分の行動の責任が持てなくなります。そのような人たちは自分の命を取ったことで罰せられるわけではありません。また覚えておくべきことは、判断は主に任されるという点です。主は人の思い、意図、そして能力をご存知です。主はその無限の知恵によってすべてのことを時にかなって行なわれるでしょう。」(モルモンの教義,ソルトレイク市,ブッククラフト,1966,771)

ここで注目したいのが、神はわたしたち一人一人をよくご存知であるということです。どこにいて何に悩んでいるかちゃんと分かってくださっています。なので、自殺したからといってそれが罪にはなるとは限りません。苦しい気持ちのまま死を迎えなくてもいいように、わたしたちに寄り添い理解してくださる御方がいらっしゃることを覚えておいてください。


贖いによって救われる

イエス・キリストは「贖い主・救い主」と呼ばれることがあります。呼び名の通り、わたしたちの罪を贖って救いに導いてくださる方です。キリストはわたしたちのことを理解できるように、この地上にお生まれになり、完全で神に対して従順な人生を過ごし、人には耐えられない試練を経験し、十字架上で亡くなりました。今のあなたの心にある喜びも、苦しみもキリストは理解してくださっています。ベドナー長老の言葉を心に留めておいてください。

「わたしたちが現世で直面する肉体的な痛み、霊的な傷、苦悩や心痛、病や弱さのうち、救い主が経験なさらなかったものは一つもありません。……主は手を差し伸べ、触れ、助け、癒やし、強め、わたしたちが自分でなれる以上の者にしてくださり、自分の力では決してできないことをできるようにしてくださいます。」

覚えていてください。あなたは1人ではない、ということです。主はいつもそばにいてくださいます。孤独を感じる時、耐えられないほどの苦しみの中にいる時、どうぞ祈って助けを求めてください。必ずあなたの心に主の助けを感じることができます。

人と人との繋がりは癒しをもたらし、元気を与え、1つの尊い命を救うことができます。できることをやるなら、わたしたちの足りないところは主が補ってくださいます。最近会っていない・連絡を取ってない友人や家族に連絡してみませんか?何気ない近況報告や会話から、誰かが生きる希望を持つことができるかもしれません。

 

こちらの動画も合わせてご覧ください。

参考:「自殺を考えたことのある人」が最初にやるべきこと

 医師が語る 自殺する人と、踏みとどまる人の違い

 自殺—癒しの途上にある人を助ける

 

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