妊娠中は人生で最も難解で最も大変な時期ともいえます。特に初めての子を身ごもっている母親にとってはそうでしょう。妊娠中の会員にとって、教会の教えや習慣の一部が逆に妊娠中の大変さを加速させてしまうことがあります。
私自身、特に専門的な知識があるわけではないので、モルモン教のドゥーラに話を聞いてみました。ドゥーラとは、マタニティ生活の究極のエキスパートです。妊娠に関する医療的な処置や、知識以外のすべてのことにおいて、妊婦と家族がより快適に過ごせるように手助けをするのが、ドゥーラの役目です。この度、ドゥーラであるムーアさんが教会員の母親たちがどうしたらより快適なマタニティー生活を送ることができるのかという質問に答えてくれました。
1.出産はいつか経験しなければいけないと腹をくくる
子どもというと、妊娠や新生児のことばかり考えがちで、出産についての話は忘れられがちです。かわいらしい赤ちゃんに会うことばかりを楽しみにするのは普通のことですが、ムーア氏は、出産後のことばかりを考えていると準備不足になってしまう危険性があると言います。
「一口にモルモン教の会員といっても、家庭によって様々な違いがあります。」ムーア氏は続けてこう言います。「多くの家庭では、出産の現実やよろこびに関する率直な会話が持たれます。」これはいい家族の例だそうです。「教会の中のたくさんの人が、出産を触れてはいけないもの、として扱う風潮があるのも確かです。」
出産は困難で、決して美しいことではありませんから、会話の中で触れられないのは普通のことでしょう。しかし、前もって出産時に起こりうるあらゆることを受け入れることが、出産中に現実を受け止めるのをいっそう楽にしてくれるのです、とムーア氏は強調します。
ムーア氏からの提案:
- 天のお父様から授かった肉体のすごさを褒め称えましょう。
- 出産経験者の話を聞いてみましょう。
- 出産について話すことを習慣にしましょう。それ以外にも、マタニティー生活に関する様々なことを気軽に話せるようにしましょう。
- 出産は天の御父の計画の一部だと覚えておきましょう。
2.言いたいことを言う
取材中、ドゥーラたちは、しきりに「教会の女性はもっと主張をしないとだめだ」と言いました。ムーア氏によると、「モルモン教の会員は、よい聞き手です。そのため、妊娠中に医師や家族から受ける助言をしっかり聞くことができるという利点があります。しかし、自分の要求をきちんと伝えることも必要なのです。」他の患者と比べて、教会員には特有の好みがあるかもしれません。それらについてきちんと話をしましょう。
ムーア氏は他にも、モルモン教の会員や、それ以外の女性たちの中に存在する、自分の中で考えすぎるという傾向に関して警告します。「なにか疑問や気になることがあるのなら、聞いてみましょう。」産婦人科医や助産師たちは、たくさんの患者を相手にするので、一般的に快適とされる方法を勧めますが、方法はそれだけしかない、というわけではないのです。
「こんなこと言われたら嫌がられるんじゃないか、と感じても、医者ときちんと話をすることは大切です。」とムーア氏は言います。「自分の望みを伝えたうえで、医師はどんな変更が可能か教えてくれますから。」ムーア氏によると、妊娠、出産においてより自身の意見を通すことができた女性は、他の女性に比べてより幸せで優れた母親になると言っています。
3.自身の標準を守る
モルモン教の女性は出産する際に、標準に関して特に過敏になりがちです。これに対してムーア氏は二つのアドバイスをくれました。
1-出産中の標準は、普段の標準と異なる
出産中は、教会の服装の基準は通用しません。教会員の中には、医師の前で、ステークの青少年の活動のときに求められる標準に反した格好をするのに罪悪感を感じる女性がいる、とムーア氏は言います。しかし、標準は場合によって例外があるもの。出産のときは、自分がもっとも快適でいられるものを着るのが正しい選択なのです。
2-好きなだけ慎み深い格好をする
ムーア氏は同時に、より慎み深い服装を好む女性の味方でもあります。「出産時に着るのはだいたい病院からもらう出産着ですが、産婦は自分が着たいものを着られる。」
ムーア氏は、もしもっと長い丈のものが着たいならそれを着ればいいと言います。出産時、なるべく部屋に出入りする人の数を最小限にしてもらうようお願いすることもできます。学生などが研修中の病院などでは、特にその様な配慮が必要です。
「かなり現実味のないことを要求しない限り、慎み深くありたいという要求を相談することは、何の問題もないんですよ。」と、ムーア氏は語る。
4.妊娠を通して家族の絆を深める
家族を大切にするモルモン教の家庭では、妊娠という文字通り家族の創造を通して、絆を深めるための時間をとることは、わりと自然に起こるかもしれません。
妊娠中の他の疑問やリクエストのように、自身が生まれてくる子とどんな関係を築きたいのか、医師にきちんと伝えましょう。
絆を深めるためにできることについて、ムーア氏は次のような提案をしています。
- 新生児と生まれてすぐにスキンシップをとる
- なるべく早く授乳する
- 母子同室にする
- 父親とのスキンシップも欠かさない
出産は本当に特別な経験です。ムーア氏は、分娩室で祈りを捧げたり、神権の祝福を受けたりする産婦をよく見かけるそうです。御霊がそのようなことを促しているのなら、周りを気にしたり、遠慮する必要などないのです。
実際に、ムーア氏は妊娠中に、子どもの霊がこの世に到着したと感じる、と語る女性に何人も会ったそうです。
5.帝王切開にがっかりしない
たしかに、自然分娩と帝王切開には大きな違いがありますが、どちらが勝ったり、劣ったりしているわけではありません。
出産に関して細かい希望や計画を持つ女性は、何らかの原因で帝王切開による出産を選ばざるをえなくなった時、望み通りにいかなかったと、がっかりしてしまいがちですが、ムーア氏はこう言います。「たしかに帝王切開は手術ですが、家族に絆を深める経験ができないわけではありません。」
帝王切開では、医師や看護師の注意は手術そのものにそそがれ、産婦よりも他のことに気が入ってしまうため、産婦が要求を伝えるのがとても難しい状態になりがちです。
出産後すぐ赤ちゃんを母親の元へ連れてきてもらうようリクエストすることができます。母親とのスキンシップはすぐにはできないかもしれませんが、父親が赤ちゃんとスキンシップを取れるようリクエストすることができます。
ムーア氏いわく、「家族思いの帝王切開にしてください」といえば、多くの医師はモルモン教の女性たちが理想とするような経験ができるよう配慮してくれると言います。
6.親族に対する希望をはっきり決める
教会員は大家族が多いので、妊娠中や産後、助けの手がたくさんあるという面はある反面、きちんと線引きをしないとかえって大変なこともあります。
実際に子供が生まれる前に、親族との距離感について決めておきべきだ、とムーア氏は言います。体力を消耗しきった出産直後に難しい決断を下すのは困難です。以下のことについて考えてみてください。
- 親族の中で、誰に会いたいですか。
- いつ会いたいですか。
- 一度に何人まで面会を受け入れられますか。
これらの質問には、決まった正解はありません。しかしムーア氏は、初めて親になる夫婦は、予想より多めにふたりだけで赤ちゃんと過ごす時間が必要だといいます。「ノーと言うのは、いけないことではない」そうです。
自分の希望の距離感がわかったら、前もって伝えておきましょう。夫や看護師たちにも希望について知っていてもらえるといいでしょう。
7.いろいろなカタチの家族がいることを忘れない
教会の教えで、家族はとても大切なものとされているがために、妊娠中や出産直後に、子どもを授かることのできない夫婦と接するときに、問題が生じてしまう場合があります。
ムーア氏は、だからといって新米ママたちは、そういった環境にいる人に気を遣って自分の感情を隠す必要はない、といいます。
自分の感情や経験は、あくまで自分のものであって、それが一般常識であり、普通のこと、といったような話し方をしなければ、自分と他人を比べることなく、素直に他人の幸せを喜びやすくなる、とムーア氏は言います。
モルモン教のドゥーラからのアドバイスから何か学べたことがあったら、ぜひこの記事を必要としている人と共有してみてください。
この記事はChristopher D Cunninghamによって書かれ、LDS.netに投稿されたものです。