(これはブリッジャーの父親が書いた手紙を翻訳したものです。)


最初から妹思いだった兄


2016年上旬、ブリッジャーの世界は大きく変わりました。妹が生まれた時、彼はまだ19ヶ月でした。親として私たち夫婦は、ブリッジャーが妹の誕生をどう受け止めるか心配でした。しかし彼は、病室に置いてある特大の椅子にためらうことなく飛び乗ると、妹を抱っこする順番をじっと待ちました。その瞬間から、彼と妹の間には特別な
兄妹の絆があることが明らかでした。彼の小さなふっくらした頬から笑顔があふれ、部屋中いっぱいを満たしているかのようでした。彼の祖父が「おじいちゃんにも抱っこさせて」と言っても、ブリッジャーは自分の胸に人差し指を当て「まだだよ」と譲りません。そんなことが15分ほど続きました。誰かが彼の妹を抱っこしようとすると、またブリッジャーは自分の胸に指を当て「まだ僕の番だよ」というジェスチャーをするのでした。彼は自分の番が回ってくるのをずっと待っていたので、そう簡単に次の人に譲りたくありませんでした。

妹を抱っこする兄ブリッジャー
それ以来、ブリッジャーはいつも妹のそばを離れませんでした。しかし妹はあまり社交的ではないので、兄をうっとうしく感じることがよくあるようです。ブリッジャーは社交的で、学ぶことが好きで、愛情に満ちていて、わたしたちにとって大きな喜びです。彼のいない生活など考えられません。

妹が大好きな兄ブリッジャー
ここ2年以上前から、ブリッジャーと彼の兄と父親は、近所のブラジリアン柔術道場に通ってていました。ブリッジャーはクラスでいつも1番年が若くて、背が小さい生徒の1人でした。そのため、いつも自分よりも体格のいい対戦相手と対決しなければなりませんでした。彼は飽きっぽいところがありますが、成長と上達が見て取れるようになってきました。地元の道場で出会った仲間は、彼の親友と言ってもいいでしょう。


大きな決断の始まり


近頃ブリッジャーの兄が、地元の格闘トーナメントに出場する手続きをしたのですが、驚いたことに、ブリッジャーも1番年少の枠に出場したいと言い張ったのです。結果はブリッジャーが4位で兄は1位でした。メダルが取れなかったブリッジャーは、かなりショックだったようです。親としてわたしたちは、もっと気楽に考えて欲しいと思い、彼がベストを尽くしたことを知っていること、そしてとても勇敢だったと全力で伝えようとしました。帰宅途中、車を運転しながら話し合ったのですが、彼の失望はさらに大きな決断の始まりであるように感じました。


コロナウイルスが世界中で激しさを増す中で、わたしたちも忙しいスケジュールの中時間を取り、毎週日曜日には家族で集まり、一人一人の状態について話し合いました。子供たち一人一人は様々な目標を立てたり、聖典をみんなで読みました。ブリッジャーは、兄弟の中でも学んだことをよく覚えていたり、積極的に話し合いに参加するのですが、彼の年齢よりも知識も経験も豊富な人のように考えや意見を言うので、わたしたちは驚かされることがよくありました。


妹のために狂犬に立ち向かう


そして2020年7月9日の彼が妹をかばうという行動は、わたしたちにしてみれば、全く驚きではありませんでした。起きた事件について尾ひれをつけ、話を飾ろうとしている訳ではないことをご理解ください。事件についてわたしたちが知っている情報は、4歳児の娘とブリッジャー自身から聞いた話に限られています。


あの日、ブリッジャーと妹は友達の家へ遊びに行き、裏庭で遊ぶことにしたそうです。裏庭に出ると、お友達は1匹の犬を指差し「あの犬はいい子だよ」と言い、もう1匹の犬を指さすと「あっちの犬はね、こわい犬なんだよ」と説明しました。


ブリッジャーの話によると、その瞬間、そのこわい犬が彼らに向かって来たそうです。そして当時のことをこう言いました。「急いで横にいる妹の前に立って、犬が妹を噛まないようにしたんだ。犬が動く方に僕も動いて、後ろにまわらせないようにしたんだよ。」


するとその犬は逃げもせずブリッジャーに飛びかかり、彼の頬に噛みつき離れなかったそうです。ブリッジャーは犬に噛まれると、妹に走って逃げるようにと叫びました。犬が離れた隙に、ブリッジャーは妹に駆け寄り、庭のもっと安全そうな場所に移動したと話しています。


その時、犬の飼い主は犬を捕まえて逃げられないようにし、急いでブリッジャーを家の中に入れ、傷口を押さえ救急車を呼んだと聞いています。わたしたちは、彼らが愛を持って処置をしてくれたことに一生心から感謝しています。ブリッジャーの親として、もちろんこの知らせを受けた時はとてもショックで、急いで彼のもとに行きました。


消防士と救急救命士が到着すると、わたしたちはブリッジャーの傷がどれほどのものか診断することができました。当然のことながらかなりの出血があり、消防士たちはブリッジャーにシャツを切ってもいいかと尋ねました。ブリッジャーは「ママがこのシャツは僕に似合うって言ってお気に入りだからやだ」と断りました。変に聞こえるかもしれませんが、救急救命士たちがブリッジャーを処置しているのを待ちながら、妻とわたしはそこで関わっているすべての人への愛の精神を強く感じました。


ブリッジャーの父親が付き添いとして救急車に乗り、母親は他の子供たちの世話をしたり、落ち着かせるためにいったん家に戻りました。救急車で病院に向かう途中、ブリッジャーは「救急車に一回乗ってみたかったんだ。…でもね、こんな風に乗ることになるなんて思ってもみなかったよ。お家に帰る時も乗れるかな?」と言いました。彼は救急救命士からもらったストレスボール(手のひらサイズ用のボールを握ってストレスを解消するもの)がとっても気に入りました。気持ちを落ちつかせたい時のために、今でもそのボールを持っています。


病院に到着すると、救急病院のスタッフは急いでカーテンで仕切られた場所へとブリッジャーを運んで行きました。彼が泣いたのは、点滴の針を刺されたときだけでした。途中、動物管理局員が来て、ブリッジャーを噛んだ犬は規定の予防接種を守り受けていると教えてくれました。またその局員は、事件を通報したのは犬の飼い主であること、犬は1歳のジャーマン・シェパードのミックスの補助犬で、安楽死させるつもりだと言っていると話しました。ブリッジャーは「あの犬は大丈夫だよね。殺されたりしないよね?」と聞きました。


あの犬の心配は動物の警察の人たちがやってくれるので、ブリッジャーは何も心配する必要はないと約束しました。


ブリッジャーの父親にとって1番辛かったのは、CATスキャンをとっている間の静かな時間でした。ブリッジャーの病院のベッドの横に置いてあった折りたたみ式の椅子に座りながら、その日起きたことについて考えていました。ブリッジャーがどうやって妹をかばい守ったか話してくれた時に、父親はなぜそうしたのか聞きました。すると彼は躊躇することなく「もし誰かが死ななければならないなら、それは僕だと思ったんだ」と言いました。


日曜日の家族の時間、わたしたちは個人の犠牲と奉仕について話し合ったばかりでした。そしてまさにその時、ブリッジャーは日曜日に学んだ教訓をわたしたちに教えてくれたのでした。ブリッジャーは顔や頭を負傷し、90針以上も縫う手術は2時間近くかかりました。集中治療室を出る前に、担当医師のジョーダン・グリアII医師は「あなたの息子さんは今までわたしが担当した中で最も勇敢な患者ですよ」と言いました。


次の日の朝、腕のいい素晴らしい形成外科医のジョセフ・F・ルービィ医師が回診に来ると、ブリッジャーにペットは飼っているかと聞きました。


ブリッジャーは、エレクトラとソーの2匹の犬を飼っていると答えました。犬の種類を聞かれると、ブリッジャーは肩をすくめて「2匹ともいい子たちだよ」と言いました。

自分よりも妹を最優先にした兄ブリッジャー
この経験から学んだこと


家に戻ると、ブリッジャーの妹はお兄ちゃんが帰ってきたことに大喜びでした。彼女は父親のもとへ走り寄ると、ブリッジャーが彼女を守ってくれたことや、出血がひどかったこと、彼女がどんなに怖かったかについて興奮気味に話しました。わたしたち家族は、人生は一瞬にして変わってしまうものであるということを身をもって学びました。また、何気ない小さなことへの感謝の気持ちを以前よりも、もう少し持てるようになったと思います。


ブリッジャーのニコールおばさんは彼を元気づけようと、
インスタグラムにこの経験を投稿することを思いつきました。彼の大好きなスーパーヒーローや、ユーチューバーのミスター・ビーストに、何かエールでももらえたらいいなぐらいの軽い気持ちでした。しかし想像以上の世間の反応に、わたしたちは驚かされると同時に謙遜な思いにもさせられました。わたしたちに向けられたすべての優しい言葉、愛、祈りにとても感謝しています。あの小さなブリッジャーが、多くの人々に感動を与えていることを知り、わたしたちは一日中何度も心から涙を流しました。ヒュー・ジャックマン、ザッカリー・リーヴァイ、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ルッソ兄弟、ロビー・アメル、マーク・ラファロといったヒーローたちや、その他世界中から数えきれないほど、多くの方々から優しい言葉、心からのメッセージをいただきました。わたしたちが受けた愛と支援に驚かされています。


わたしたちの希望とささやかな願い

 

多くの方々は、わたしたちのために力を貸したいと言ってくれました。そのことにとても感謝しています。しかしわたしたちよりも助けを必要としている人々が大勢います。何度も祈り考慮した結果、もしわたしたちのために何かしたいと思われる方々がいらっしゃるのであれば、以下の団体への寄付を考慮していただきたいと思います

Mission 22 —兵役経験者を自殺から守るための団体

Operation Underground Railroad —性的目的の児童売買の撲滅を誓う団体

The Wounded Warrior Project —アメリカで最も重傷を負った兵役経験者が再び自立できるように助けることを目的とした団体


わたしたちは資金援助を求めるつもりはないことを、誤解のないように表明します。したがって、わたしたちはブリッジャーの逆境を利用し、個人的な利益を図ろうとするいかなる者も明白に非難します。また犬の飼い主につきましては、わたしたちにとって彼らは大切な存在であるため、みなさまには彼らのために祈り、表面的判断をしないように心からお願い申し上げます。


若干皮肉なことに、ブリッジャーが怪我をする前に、わたしたち家族は世界中にメッセージをたった一つだけ伝えるならば、それはどんなメッセージかと話し合っていました。実際にそんなことをすることになろうとは予想もしていませんでした。今年は暗いニュースの多い年であり、もっと多くのポジティブなメッセージが必要だと思います。


ブリッジャーの行動後、わたしたち家族はシンプルな願いを決めました。わたしたちがお互いの重荷を背負い合い、弱い者、虐げられている者、この世から見捨てられている者たちのために立ち上がり、彼らを守り、悲しむ者とともに悲しみ、慰めの要る者を慰め、お互いに愛し合うことができますようにと願います。わたしたちがブリッジャーの模範に従って、この世に幼子のように働きかけ、家庭、コミュニティ、州および国にさらに大きな平安をもたらすことができますように。

 

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