モルモンやモルモン教会とも呼ばれることがある末日聖徒イエス・キリスト教会では、知恵の言葉という戒めがあり、教会員は酒、たばこ、コーヒー、茶、有害な薬物を摂取しません。

お酒やたばこ、薬物は分かるけど、お茶もコーヒーも身体にいいって聞くし、どうしてなの?という質問を受けたことがある教会員は少なくないでしょう。ではなぜ、身体にいいはずのお茶もコーヒーも飲まないのでしょうか?

 

知恵の言葉とは

この戒めは、わたしたちの肉体と霊の健康を保つための律法です。1833年2月27日、イエス・キリストは当時の大管長であるジョセフ・スミスを通して食物の良し悪しを明らかにされました。(教義と聖約89章5-17節参照)以下が具体的な例になります。

知恵の言葉を写真で解説した図

教義と聖約89章に記載されている「熱い飲み物」は、コーヒーとお茶のことを指します。この啓示を受けた1800年代のアメリカでは、熱い飲み物として飲まれていたのはお茶とコーヒーのみだったそうです。

 

知恵の言葉(お茶とコーヒーの歴史

お酒の歴史からの繋がり

1700年以降、イギリスからアメリカに入植した頃から、人々は発酵させた桃ジュースやリンゴ酒を飲んでいました。また、西インド諸島からラム酒を輸入して飲んだり、糖蜜を手に入れ蒸留(じょうりゅう)してラム酒を作ったりしていました。

その当時、浄化されていない水は身体に悪かったので、人々は少なくても食事の時は飲酒をしていたそうです。そのうち、蒸留酒の一人当たりの年間消費量が14リットルにまで達しました。(蒸留酒は酵母を発酵して作られる醸造酒よりもアルコール度数が高いものです。)

そして、その後のアメリカ独立戦争が飲酒量を増やす原因となりました。糖蜜の輸入ができなくなり、人々はウイスキーを代わりに飲むようになりました。またウイスキーの方が製造コストを抑えられ、販売価格も下がったことから、ウイスキーの製造と飲酒が一気に広まりました。

飲酒量が増えたことで宗教の感受性を損ない、それによって飲酒を禁止する教会や宗教団体が数々出てきて、多くの教会では禁酒の動きが出ました。そしてそれは社会的な現象になり、禁酒運動に繋がりました。

お酒の代わりに

禁酒運動を率先していた人たちは、お酒の代わりにコーヒーを紹介することで、この運動は進んで行きました。しかし18世紀のアメリカではコーヒーは高級品とみなされており、人々はイギリス製のお茶を飲んでいました。

アメリカ独立戦争後は、イギリス製のお茶を飲むことは国を愛していない行為とみなされ、お茶は人々に飲まれなくなりました。

一方、高級品とされた原因のコーヒーの輸入関税が撤廃され、ウイスキーと同じ値段で手軽にコーヒーを手に入れることになったことから、人々はウイスキーよりもコーヒーを飲むようになり、生活必需品の一つとなったのです。

歴史の流れの中で受けた啓示

禁酒運動やイギリス製のお茶の流通、コーヒーの一般化などの流れの中に、もちろん当時の末日聖徒もいました。家の伝統や文化としてもアルコールが習慣となっているところもありました。

知恵の言葉は初め強制や戒めではありませんでしたが、1921年にヒーバー・J・グラント第7代大管長が、教会員にすべてのアルコール飲料・たばこ・コーヒー・お茶を断つように言いました。この期間はある意味神が与えた猶予期間となりました。

この期間に、教会員たちは知恵の言葉を守ることができる新しい伝統をそれぞれの家庭に確立することができのです。この時代の流れの間に、毎週教会に集い、神殿に定期的に参入することができるようになり、教会員はより高い標準を求められ、そしてそれに従うようになりました。

入植や貿易などによって習慣に関する新たな問題が出てきましたが、その時に必要な啓示はきちんと与えられてきていたのです。またそれを受け入れる準備の時間もちゃんと用意されていました。現在、末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は、教会が発表する知恵の言葉を正しく守ることを求められています。


知恵の言葉は戒めである

知恵の言葉で、お茶やコーヒーを摂取しないように言われていることから、カフェインが体に良くないためだ、という考えを聞くことがあります。しかし、カフェインはココアやチョコレートにも含まれています。

また、薬に使われることもあります。実際に、朝の目覚めをよくしたり、集中力を高めるためにカフェインを摂取するという方法を取っている人もいます。反対にカフェインを避けるという健康法を実行している人もいますが、それは知恵の言葉を守っていることとは簡単には結びつきません。

大切なことは、知恵の言葉は神から定められた戒めであるということです。戒めとは、神がわたしたち人間に与えられた決まりや条件のことを言います。わたしたちが成長し、祝福を得るために必要なものです。

お茶やコーヒーに含まれているポリフェノールなどが体にいいと言われながらも、末日聖徒イエス・キリスト教会の会員がお茶やコーヒーを避けているのは、この戒めを守っているからです。戒めを守ることでわたしたちは神への愛を表すことができます。


知恵の言葉から得られる祝福

身体の健康

知恵の言葉を守ることで、まず身体に祝福を受けます。有害な薬物はもちろん、お酒やたばこを摂取しないので、脳や内臓に余計な負担が掛かりません。また、野菜など身体にいい食べ物を積極的に食べるので、健康になります。いくら身体にいいと言われていても、お茶やコーヒーには特に子供に有害であるという見解もあることで、やはり身体への負担を減らすことができます。

教義と聖約89章には「その​へそ​に健康​を​受け、その​骨​に​髄​を​受ける​で​あろう(18節)」、「また、走って​も​疲れる​こと​が​なく、歩いて​も​弱る​こと​は​ない(20節)」と書いてあります。これは知恵の言葉を守っていたら、無敵の身体になるというわけではありません。

この戒めを守っている末日聖徒イエス・キリスト教会の会員がみんなマラソン選手になれるというわけでもありません。しかし、お酒やタバコなどを日頃から摂取している人との違いは身体に出てくることがあります。

ある教会員が子供の運動会の保護者リレーに参加した時のことです。走り終わってから気づいたのが、ほかの保護者の何人かがいつまでも息づかいが荒かったということでした。自分はとっくに呼吸が回復していたのに、と不思議に思ったようです。しかし、その保護者達と自分の違いは、お酒もタバコもしないということでした。

歌手にも体調管理で喉の調子を保ったり、ライブのために禁煙や禁酒をするという話があります。知恵の言葉で摂らないようにと言われている物は、やはり身体に何かしら影響を与えてしまっているのです。

常習癖を乗り越えられる

知恵の言葉によって避けるように言われている物は、共通して常習癖をもたらす可能性があります。それはお酒に含まれるアルコール、タバコに含まれるニコチン、お茶・コーヒーに含まれるカテキンなどが体内に取り込まれると、脳の中枢神経に作用するからです。継続して摂取し続けると、やめようと思ってもやめることが難しくなることから、依存物質とも言えます。

それらの物質を継続して摂取することで、飲酒や喫煙、コーヒー・お茶を飲めないと、身体や精神的に不調を感じるようになります。それがないとダメな生活になるのです。常習というよりも依存のような状態ですね。

また、依存物質は悪い相乗効果をもたらします。お酒を飲むとタバコを吸いたくなる、タバコを吸う時には必ずコーヒーも欲しい、という話を聞いたことがある人もいるでしょう。実際に自分がそれを体験している(した)人もいるかと思います。それも脳がそのように求めていくからです。

ただし、アルコールとニコチンを一緒に摂取すると、がんのリスクが上がるとされています。健康診断の結果や家族の妊娠・出産を機に禁酒や禁煙をする話もありますが、それがうまくいかないという例もあります。

それは、どれか一つをやめても、ほかの依存物質を身体に取り入れることで、やめた物を脳が求めるからです。一番いいのはすべてスッパリとやめてしまうことです。

知恵の言葉はそれらをすべて摂取しないという戒めです。これを守るためには個人の意思も必要ですが、それとともに神の助けによる不可能を可能にする力、家族・友人の助けが必要です。また教会指導者や宣教師、ミニスタリングを通しての助けや導き、そして教会員であれば末日聖徒イエス・キリスト教会のプログラムが助けになることもあります。

 

霊の健康(戒めを守るということ)

知恵の言葉から得られる健康は身体だけではありません。霊も健康になります。霊の健康と言ってもピンと来ない人もいるかもしれません。心と言ったらイメージしやすいでしょか?

末日聖徒イエス・キリスト教会では、人間を含めてすべての生き物は肉体と霊で作られていると信じています。肉体は容姿を作り出しますが、霊はわたしたちの思いや個性を作り出します。知恵の言葉について書かれている聖句には、霊に与えられる祝福についても書かれてあります。「知恵​と、知識​の​大いなる宝、すなわち​隠された​宝​さえ​見いだす​で​あろう(19節)」。

身体に良くないものを取り入れないので、考える力にも悪い影響は出ません。先ほど書いたようなお酒やタバコ、お茶・コーヒー、薬物に依存することがありません。むしろ、知恵を得ます。それは、霊が清い状態であるからです。

また戒めを守っているということで自信と平安を得られます。戒めを守ることで、時には問題や悩みが生じることもあります。それを乗り越えるために信仰が必要になります。悩みながらも信仰を示し、主に頼る過程でわたしたちは清められ、御霊の導きを受けやすくなります。神様が与えられた戒めについてさらに理解できるようになるでしょう。御霊の導きに気づき、それに従えることほど霊が元気になれる方法はありません。


「知恵」を使って守る戒め

知恵と知識は違います。知識はある物事について知っていることや情報のことです。それには経験も含まれます。そして知恵は、知っている情報や経験を必要な状況に合わせて応用できる力のことです。

知恵の言葉を守るためには、摂取しないとされている物を避けるということも大切ですが、それらの物が持っている良い部分を知恵を使って活用する必要があります。料理に使う酒類は、肉を柔らかくしたり魚の臭みを取ります。味に深みをもたらします。良く加熱することでアルコールは飛びます。また、保存瓶の消毒にも使えます。

タバコという植物は、作物の害虫被害を抑えることに効果があります。コーヒーやお茶に含まれているカフェインは抽出して薬として使われています。脳を麻痺させる薬物も、がん治療などの痛み止めとして使われることがあります。

教会の手引きには、「会員は、不法な薬物を含む物質はいかなるものであれ摂取するべきではありません。また、資格ある医師の監督下で使用するのでないかぎり、有害な物質や習慣性のある物質を使用するべきではありません」と書かれてあります。

反対に、砂糖や油分は知恵の言葉で禁止されていませんが、自分の身体の適用量以上の甘い食べ物脂っこい食べ物を摂取し続けると、身体は不健康になり、それに伴い精神的にも悪い影響を与えます。

医者から処方された薬やドラッグストアで購入できる薬の乱用も同じです。知恵の言葉を守るためには、食品の栄養についての正しい知識も必要です。また、神が決められた範囲でそれらを活用できるように考え、必要なら祈り、神から答えを得て行いに移すことが大切です。


知恵の言葉を守るために

この戒めを守るためには強い決意が必要になります。すでに習慣がある場合は、自分はお酒やタバコ、コーヒー・お茶、有害な薬物を嗜好品として摂取しないという決意が求められます。また、神に従順でありたいという気持ちがあると習慣を克服する助けになります。

そのためには、家にそのような物を置いておかないという方法を取ることができるしょう。もしあなたが知恵の言葉を守ると決めて、知恵の言葉と関係のない生活をしている人と食事をした時には、知恵の言葉について教える良いチャンスとなるでしょう。相手に変に思われるかな?と不安になるかもしれませんが、あなたのことを大切に思ってくれる人なら理解してくれると思います。

末日聖徒イエス・キリスト教会の会員の多くも似たような経験をしています。そして同じように、知恵の言葉について説明をしています。それがきっかけでもっと自分のことを知ってもらえたり、自分の信仰について理解してくれる人に出会えたりしています。

もし、あなたが教会員ではなくて、知恵の言葉を守っている人と一緒に食事などをする機会があったら、どうぞその人の話を聞いて、そして理解を示してみてください。そして知恵の言葉について知って共感できるところが少しでもあったなら、あなたも知恵の言葉を守って得られる祝福を経験してみませんか?

 

「知恵の言葉」は、人を恐れさせる立場から論じるのではなく、確信と信頼の立場から論じています。その啓示は聞く人々に、神の命令に従順であれば、霊的また肉体的に大いなる報いを与えてくださる神に信頼を置くよう勧めています。どうぞ、自分の心と身体の健康のために神と神の約束を信頼してみてください。この戒めを守ることで神の御霊を感じやすくなり、あなたが内側から清い存在になれます。知恵の言葉について感じたことをぜひ教えてください。

 

お茶やコーヒーを飲まないことで得られる祝福をもっと知りたいですか?

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