「フェイクニュースとは何ですか?」という問いに「ジ・オニオン!」と答えた学生がいました。皆さんは「ジ・オニオン」を知っていますか?「ジ・オニオン」というのは意図的に嘘の記事を普及するウェブサイトです。人の気分を害する目的で作られているものではなく、ただ冗談を広めているのです。「ジ・オニオン」のある記事によると、日本語を話せる人たちの58%は日本人ではなく、23才のアメリカ人男性だというのです。その男性たちが大学を卒業してから、すぐに日本の札幌や神戸に行って英会話を教えたり、日本語を学んだりするそうです。このような記事を読む方が、本当のニュースより面白いかもしれません。しかし、すべてが当たり障りのない冗談ではなく、混乱させたり、メンツをつぶしたりするフェイクニュースもあります。


フェイクニュースとは?

フェイクニュースは虚偽の情報で作られたニュースですが、今日の社会では誰でもそんなニュースをインターネット上に掲載できます。辞書によると、フェイクニュースというのは、本当のニュースと似せて作られたもので、インターネット上で広まります。単なる冗談として、あるいは大衆を政治的に扇動するために作られる偽りの話です。また、本当ではない情報をねつ造して出版することです。そのために、真理を見出したり、真偽を見極めたりすることが、近年ますます難しくなっています。悪意のある掲載の評判は良くないものの、アメリカでは「フェイクニュース」が2017年の言葉として選ばれたほどです。


社会現象としてのフェイクニュース

各地で起こったフェイクニュースに絡んだいくつかの社会問題を紹介しましょう。これらのニュースは、正しく理解されているものとしてまとめましたが、徹底的な調査を行ったわけではないことをお断りしておきます。

  1. 2016年のアメリカ大統領選挙の時のことでした。一人の男が、ある店で子供の人身売買が起こっているという記事を読んだために、ライフルを持って店に入って3回発砲しました。誰も傷つけなかったので、この男は自分の行動が正しいと思っていました。

この社会問題の要因の1つに、SNS(フェイスブックやツイッターなど)による情報の拡散があります。SNSにはたくさんの大人気無く、公表すべきでない投稿が見られます。ちょっと変わったことや、ささいなことに目くじらを立てる人が大勢いるせいか、フェイクニュースが早く広まってしまいます。また、友だち同士は互いに信頼しているので、もし一人がフェイクニュースに騙されてSNSに投稿したら、その人の友達もそのニュースに騙される可能性が高くなります。また、情報がSNSのような口コミの場合、何が本当で何が嘘なのか判断しようとしても、なかなかできないときがあります。なぜでしょうか。

その理由の一つは、嘘をついたり、他者を扇動することが楽しいからなのかもしれません。現に、ドラマを好きな人は大勢います。問題を抱える人の話が面白いからです。ドラマは他人事で、直接自分の身に降りかかることではないからかもしれません。同様に、フェイクニュースが存在していても、それ自体が問題ではありません。フェイクニュースと実際のニュースを区別することができない人々がいることが問題です。

  1. 日本の情報社会での現状はどうでしょうか。2019年1月22日、NHKの取材による記事、「“フェイク”はカネになる その実態を追跡した」には、フェイクニュースの実態が具体的に述べられています。人気番組や人気タレントの画像が改ざんされて、それが偽の広告情報を伝える道具として使われ、消費者を翻ろうしている例がたくさんあげられています。人の注目を集めるような情報を流せば、簡単にお金を稼げるというインターネットに依存する情報社会の落とし穴が、そういうフェイクニュースの普及を助長しているようです。
  2. 現在の社会は、よく「ポスト真実の社会」と呼ばれています。それは政策や時事問題の詳細や事実より、個人的に信じていること、または感情へのアピールが重要視される文化です。ショッキングなニュースがバズって、人々は自分の信条にマッチした情報を早く信じる傾向があります。例えばあるニュースサイトが、カリフォルニア州のソノマ郡で、特定の移住民がいくつかの山火事を起こしたという誤った記事を掲載しました。その結果、その移住民に対する社会全体の感情を悪化させてしまいました。ニュースサイトの最も大切な目的は、真実を正確に伝えることであるべきです。


歴史を振り返る

早くも紀元前13世紀に、戦争のフェイクニュースが出回っていました。諸国の王が自慢したり、敵についての中傷が普及したりすることがよくありました。たとえば、エジプトとヒッタイト間で起きたガデシュの戦いが引き分けになった時、エジプトのファラオは見栄を張って、自国民に対して「戦勝」を宣言したり、勝利のモニュメントを作らせたりする始末でした。日本でも第二次世界大戦に敗戦するまで、国民には日本が優勢だと伝えられていました。このように、歴史を通じて戦争のフェイクニュースは多々あります。

古代から噂や口コミが存在してきましたが、印刷機とインターネット発明後には、ニュースや噂を早く普及できるようになりました。よく売れれば収益が出て、ビジネスにできるわけです。嘘が面白ければ人が買ってくれるので、嘘でも劇的に書く、いわゆるイエロージャーナリズムが生まれるきっかけとなったのです。

フェイクニュースという言葉自体は、1940年ごろに登場しましたが、20世紀以前には注目されませんでした。21世紀にインターネットが一般化して、どのような情報でも公表することが容易になりました。真実を見極めることは民主主義の基本です。真実の判明無しに、賢明な採決をするのは困難です。真実は個人の考え方によって曲げられるものではありません。


新しい世代をフェイクニュースの悪影響から守る

フェイクニュースについての不安を抱える人が多いと思います。とりわけ新しい世代がフェイクニュースにさらされている状況は危機的です。この状況に対処するためには、まず最初にわたしたち自身がフェイクニュースに気づき、真偽を見分ける識別力を養う必要があります。さらに、適切なソーシャルメディアとインターネットを使って、真実で良いものを世に広めることも大切です。フェイクニュースを完全に阻止できないにしろ、その流布が減速するきっかけにでもなれば、十分やりがいがあります。それができたら、ほかの人たち、特に若い人たちに教えなければなりません。

若いうちから子供たちに真理を教え、世界の改善につなげましょう。影響を及ぼすのに一番効果的なのは子供の時期だからです。例えば、子供たちは親の考え方に従って政治的な判断をくだすことが、統計上指摘されています。

またフェイクニュースからの悪影響を一掃するのを試みるのは、青少年の時期が鍵だと思われます。その時期の教育を改善し、正しいコミュニケーションができるように助けるなら、フェイクニュースは根っこがない樹木のように枯れてしまうでしょう。ただフェイクニュースの背後に存在する高慢、どん欲、利己心、嫉妬、怒りなどの悪徳は完全にはなくなりません。わたしたちには、人々の選択を取り去ることができないからです。しかし、思いやりや謙遜のような道徳を若者に教えることを優先することで、早々に改善を見ることは可能でしょう。

将来フェイクニュースの問題を解決するために、子供や青少年は大きな影響力になり、社会を担う有望な人材となるでしょう。フェイクニュースの仕組みと対処法を教え、開かれた心で検討し、真実を見分ける力を養うことが重要です。次世代が真理探求を上手にできるように訓練する社会的責任が、わたしたち大人にはあると思います。 


解決方法を求めて 

フェイクニュースへの対策

解決方法を求めるためには事実関係の確認をしましょう。主要な新聞や公的な報道機関など、比較的信頼できる情報源があります。一つの出典にだけ頼るのではなくて、複数の情報源から学ぶ方が賢明です。

また、情報源の確認についてですが、ウェブサイトと情報を流している組織などをチェックすること、さらには著者や投稿者もチェックすることがおススメです。名前がちゃんと書かれてなければ、真実ではない可能性が高まります。

そして広告が付いていますか?もしそうなら、ただクリックを促し、広告収入を得るために設計されている、またはスポンサーの企業の利益につながるように偏った情報を載せているだけかもしれません。

 factcheck.org(英語)や「フェイクニュースを減らすための簡単な提案」など、フェイクニュースを見抜く助けになるウェブサイトもたくさんあります。特定の記事がフェイクニュースかどうかという質問を送ると、答えてくれるサイトもあります。

さらに、自分の信じていることも考慮してください。人は皆、知らず知らずに自分の経験や育ちからきている偏見があるので、気をつけて、その偏りを意識しましょう。

フェイクニュースに対処する最後のステップは、良い内容の記事を投稿することです。そして何かの情報を公表する前に、その真偽をしっかりチェックすることも必要です。以上のような努力が実ると、ソーシャルメディア上には、フェイクニュースよりも良いニュースの投稿が増えるでしょう。

T・S・エリオットの引用

真理を見つける努力

末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン書があるので誤ってモルモン教と呼ばれる)では、真理を求めるように教えられています。教会員としての継続的な学びは、わたしたちの信仰にとって欠かせない部分です。真理を知ることが、力と自由を与えてくれるからです。もう一度、どうやって真理を知ることができるのか復習してみましょう。

まず、真理についての聖句といえば、これ。モロナイの偉大な約束!

「聖霊の​力に​よって、あなたがた​は​すべて​の​こと​の​真理​を知る​で​あろう」(モルモン書のモロナイ書10:5)

教会の指導者であるボイド・K・パッカー会長もこう言いました。

「……主は、わたしたちを促し、導き、教え、戒めるために、わたしたちの思いに純粋な英知を注ぐ方法を御存じです。神の息子、娘は皆、知る必要のあることをすぐに知ることができます。霊感と啓示を受け、それに従って行動できるようになってください。」(「わたしの知っていること」, 2013年4月総大会)

つまり、聖霊のささやきに応えられるよう備え、聖霊に耳を傾けることこそフェイクニュースを見極める最良の道しるべなのです。

もう1つの大切なポイントは、先述したように自分で調べたり学ぶ努力をすることです。

「神はあなたがたが善悪をわきまえられるようにしてくださ」ったとあります。(ヒラマン書14:31)

ジョセフ・スミスは若かった時、どの教会に入ればよいかを知るために、自分でいろいろな教会に行き、積極的に学びました。そして、その真理を独力で見つけることが困難だと気づき、神に尋ねました。聖霊の力を借りることはとても大切ですが、全知全能であられる神に、ただ尋ねるのが近道であるというわけではありません。神は、わたしたちが真理探究への努力を払うことを望んでおられます。

フェイクニュースを見極める際によくある具体的な例はというと……「これが正しくないなあ」という印象を受ける時に立ち止り、聖霊に耳を傾けます。そして、そのことについて他の情報源で確認すると、嫌な予感が当たっていたという経験を多くの教会員がしています。いろいろな方法で吟味した上で、その情報が真実であるかどうかを祈ることができます。

 

真理を広める努力

けれども、キリストの弟子として、ただ何かを知るだけでは十分ではありません。行動する必要があります。フェイクニュースは悪い影響をもたらす可能性があるので、それに対抗できるように、真理を見つけて伝えることが大切です。これこそ末日聖徒イエス・キリスト教会の1つの目的です。教会には「教義と聖約」という聖典があります。その第75章4節にこうあります。「ラッパの音のようにあなたがたの声を上げ、わたしがあなたがたに与えた啓示と戒めに従って真理を宣言しなさい。」

ですから、末日聖徒イエス・キリスト教会は世界各国に宣教師を派遣しています。宣教師たちは真理を広めるために熱心に働いています。しかし、宣教師だけでなく、普通の教会員にも真理を分かち合う責任があります。真理を学んでからそれを心に留めて、周りの人々に伝えるという責任です。真理を伝えることは、世界中の人々の自由と幸せを維持することに繋がります。希望と喜びをもたらす助けができるのです。

ちなみに、真理は福音でもあります。福音の意味は「良きおとずれ」です。これはフェイクニュースを一掃する最強の武器です。イエスの教えに従うことによって、だれでも真理を識別する方法を身につけることができます。社会の全員がキリストの言葉を聞いて実践したら、高慢などの悪徳はなくなり、愛が人々の心に満ちます。そこに悪意のあるフェイクニュースが広まるはずがありません。

 

フェイクニュースは嘘の一種

聖典を見ると、わたしたちは隣人に嘘をつかないように言われています。フェイクニュースは嘘の一種で、否定的な結果につながる可能性があります。

前述したジョセフ・スミスは、フェイクニュースからの悪影響をまともに経験した人でした。真理を見出したことを公表したために、多くの人から反感と迫害を受け、遂には殺されてしまいました。これは、ジョセフに関するフェイクニュースを信じた人達によって行われたのです。

ジョセフの話から得られる教訓の1つは、噂が何のために広められるかと考えることです。残念ながら、世の中には誤解や悪意から、フェイクニュースをわざと広めようとする傾向が絶えることがありません。それにどう対処すればいいのでしょうか。たとえば中傷記事を読んでいる場合、その記事の作者はどの出典を引用しているのか、そしてその作者には隠された意図はあるのか、このようなポイントまで知らなければ、フェイクニュースだと見破ることはできません。要するに、わたしたちが騙されないために費やす研究には終わりがありません。

信頼できる真理を探求することは、生涯の目的の1つです。回復された教会の会員として真理を認め、しかも真理を守る責任があります。ですからフェイクニュースに直面する時に、教義と聖約に書いてあるように「熱心に…最良の書物から知恵を探し求め、研究によって、また信仰よって学問を求め」る必要があります(教義と聖約88:118)。ソーシャルメディアや口コミだけに頼らず、ジョセフ・スミスが模範を示してくれたように、真理を自分でも、また聖霊によっても求めるのが賢明な方法です。神はそうお望みで、その方法を与えられたからです。

 

(共著者のプロフィール:氏名(専攻、出身地))

サム・ボールドウィン(日本語、アイダホ州)
ディビッド・ベルナップ(運動科学、オクラホマ州)
ジェーク・ベントリー(神経科学、ユタ州)
タイラー・エバンズ(神経科学、ワシントン州)
アンジェラ・グリフィン(言語学、カリフォルニア州)
エディー・ホール(財政学、ハワイ州)
ナタナエル・ヘバート(コンピューターサイエンス、ペンシルベニア州)
レイチェル・マーティン(言語学、アラバマ州)
トア・オコーナー(心理学、アーカンソー州)
シドニー・サンズ(脳科学、ユタ州)
カウア・スプロート(心理学、ハワイ州)
ジェイコブ・ワイズナント(コンピューターサイエンス、オレゴン州)
ディラン・ワイズマン(マーケティング、テキサス州)