末日聖徒イエス・キリスト教会の提携投資運用会社(エンサインピーク・アドバイザーズ社)に対するSECの罰金について、金融法務を専門とする弁護士によるQ&Aを紹介します。

編集部注:「教会幹部は何を知っていたのか」という質問に対する回答を更新し、教会広報室からの具体的な引用を掲載します。

先日、米国証券取引委員会(SEC)は、末日聖徒イエス・キリスト教会と当教会と提携する投資運用会社であるエンサインピーク・アドバイザーズ社(EPA)に対する罰金を発表しました。

このニュースは広く知られているため、教会の評論家による誤報が出る可能性があります。この件をよりよく理解するために、私たちは、欧米トップクラスの証券取引法の専門家を含む、知識のある金融法務の弁護士たちに連絡を取り、この件について意見を聞かせてもらいました。

以下は、この件に関する大まかな影響について興味がある方への簡単なQ&Aです。

エンサインピーク・アドバイザーズ社とは何ですか?

エンサインピーク・アドバイザーズ社(以降EPA)は、末日聖徒イエス・キリスト教会の投資ポートフォリオを管理する投資運用会社です。1997年に設立され、ユタ州ソルトレークシティを拠点としています。EPAは、上場株式、債券、その他の資産を含む多様な投資ポートフォリオを管理しています。EPAは2000年に組織変更され、いくつかの子会社(LLC)に分割されました。

なぜ教会に投資運用会社が必要なのでしょうか?

他の組織と同様に、教会にも支出や収入があり、それを管理する必要があります。投資顧問会社は、教会の財源を管理し、その使命とプログラムの長期的な持続可能性を確保します。教会の財源を最大化する投資ポートフォリオの作成と管理を支援し、最終的に教会の慈善事業と免税を目的とした推進に寄与します。

EPAは、末日聖徒イエス・キリスト教会が長期的な目標に向けて計画を立て、高度な財政的自立と自給自足を維持できるよう助けてきました。このアプローチのおかげで、教会は将来に向けて強固な財政状態を維持しつつ、世界中の会員と地域社会を支援することができました。

エンサインピーク社に投資している金額はどれくらいですか?

最新の提出書類(2022年第4四半期)において、EPAは444億ドルを株式と債券に投資していると報告しました。EPAはその他の投資も保有しており、その総額は1,000億ドル以上だとしています。

エンサインピーク・アドバイザーズ社は何に投資していますか?

EPAは健全で保守的な投資慣行があるという定評があります。それは主に優良株に投資しているからです。直近の報告書では、Apple、UnitedHealth、Johnson & Johnsonといった企業への投資を最大にしているとのことです。

セメラッド・トニー氏は、Salt Lake Tribune紙に、「EPAは信仰の教義に沿って負債を避け、タバコやギャンブル株など、末日聖徒が好ましくないと考える事業の株は所持していない」と報告しています。

SECの役割は何ですか?

SEC(Securities and Exchange Commission)は、米国の連邦政府機関であり、株式、債券、その他同様の投資を含む金融市場を監督します。その役割は、投資家を保護するために、公正で秩序正しく、かつ効率的な市場を確保することです。

なぜSECはエンサインピーク・アドバイザーズ社を調査したのでしょうか?

2019年、SECはEPAの適時開示に懸念を抱いてEPAに連絡しました。弁護士の助言に基づき、2000年から2019年の間、各子会社(LLC)は、1つの集計フォームを提出するのではなく、独自のフォーム13Fを提出していました。SECの調査は、今回の個別報告の慣行に焦点を当てました。

SECの指示に基づき、EPAは2020年に1つの集計報告書を使用して報告しました。

フォーム13Fとは何ですか?そしてなぜ開示することが重要なのですか?

フォーム13Fは、株式、債券、その他の有価証券を1億ドル以上保有する機関投資家が提出を義務付けられている四半期報告書です。フォーム13Fで開示された情報は、規制当局や他の市場関係者が市場活動を監視するために使用されます。

SECが投資運用会社を調査するのは珍しいことなのでしょうか?

いいえ、このような調査は、特に大規模な投資ファンドではよくあることです。

エンサインピーク・アドバイザーズ社が保有株式を隠したことはありますか?

隠したとの疑いはありません。EPAの各子会社は保有銘柄を報告していました。そのため、すべての保有株式は、個々の関連事業体のフォーム13F報告書を通じて開示されました。EPAと教会は、すべての保有株式が報告されたと考えていると述べています。

EPAが利用した「ペーパーカンパニー」は違法だったのですか?

その疑惑はありません。LLCは、EPAが2000年に組織変更するために使用した子会社です。ほとんどのペーパーカンパニーは、特に金融分野において、合法的な目的のために使用されています。投資家のプライバシーを合法的に維持したり、金融資産をよりよく整理するために使用されることがあります。SEC の主張は、EPA の組織的なスキームが不正であったということではなく、EPA は今回のような報告を行うべきではなかったということです。

何も隠しておらず、組織も合法的であるなら、なぜSECは懸念したのでしょうか?

子会社はすべてEPAの管理下にあったため、SECは1つの共同フォーム13Fを提出する必要があると考えました。
EPAが個別申告を悪用して利益を得たという非難はされていませんが、個別申告は理論上、利益が出る可能性があるようです。

エンサインピーク・アドバイザーズ社は、その他の方法で個別報告書を提出することで金銭的な利益を得ていましたか?

当教会の投資運用会社に関するインサイダー取引、不正会計、市場操作、その他の行為について、SECによる疑惑はありません。

調査の結果はどうだったのでしょうか?

SECはEPAと教会に500万ドルの罰金を課しました。

今回の罰金は一般的な罰金と比べて高すぎますか?それとも低すぎますか?

2022会計年度、SECは41億9000万ドルの罰金を回収しました。平均的な罰則は551万ドルでした。

SECから罰金を科されることは、投資ファンドにとって大きな問題ですか?それとも比較的よくあることなのですか?

当然ながら、投資ファンドは罰金を科せられるような事態は避けるべきです。しかし、このような罰金は珍しいことではありません。毎年、投資ファンドの約5%がSECから罰金を課せられています。専門家はこれを交通違反の切符に例えています。

また、このような調査は、EPAのように複数の事業体が関与している場合に特に多く見られます。

教会の幹部指導者は、この報告方法について知っていましたか?

この質問には、教会の声明とよくある質問で答えています。 「教会の幹部指導者は、外部企業を使って提出書類を作成することを承認する際、法的な助言を受け、それに従っていました。書類の提出方法に関しては、エンサインピーク社が担当していました。教会の幹部指導者が、問題となった特定の報告書の作成または提出を行ったことはありません。

非営利団体や宗教団体がSECから罰金を課せられるのは珍しいことなのでしょうか?

非営利団体は、営利団体と同様に、さまざまな種類があります。SECが投資ファンドの活動を監視することは、そのファンドが営利団体、または非営利団体によって運営されているかを問わず、珍しいことではありません。

教会は今回の罰金について異議を唱えていますか?

いいえ。末日聖徒イエス・キリスト教会は、規制当局と協力して法律を遵守し、調査に協力することを繰り返し表明しています。また罰金を支払うことでSECとの和解に至りました。

エンサインピーク・アドバイザーズ社が意図的にSECの開示要件に違反したことを示唆する証拠がありますか?エンサインピーク・アドバイザーズ社、または末日聖徒イエス・キリスト教会は、法律違反の罪を犯しているのでしょうか?

SECの発表には、そのようなことは一切含まれていません。上記の弁護士が次のように言っています。「たしかに、投資顧問がファンドの存在をどのように開示するかを規定する規則があります。しかし、罰則や規則違反の原因となるようなことは今回の件ではありません。時には不注意から間違うこともあります。だからといって意図的に違反したとは思えませんし、犯罪が行われたわけではありません。SECが科す罰則のほとんどは、意図的でない違反の結果です。」

SECの規制制度は非常に複雑で、ある弁護士によると「地球上のどこよりも複雑な開示制度」だそうです。非常に洗練された金融専門家でさえ、これらの規制のニュアンスを完全に理解しているとは限りません。複雑な規則を誤解したために、多くの罰金が発生してしまうことがあります。

当教会およびEPAは、当然ながら専門家を雇い、SECの規制を含むすべての法令を遵守できるよう助言を受けています。

今回の件が教会の非営利の立場を変えることはないですか?

ありません。教会が非営利であることは、教会の使命と、その他の関連する要素に基づいているため、非営利という立場が変わることはありません。

末日聖徒は、投資ファンドの運用がうまくいっていないことを心配するべきなのでしょうか?

EPAは、資金管理がしっかりしているという評判があります。いかなる罰金も関係者にとっては明らかに残念なことですが、SECがこれまでEPAの報告実務を監査して誤りを発見しなかったことの方が驚きだと専門家は指摘しています。これは、今までのコンプライアンスが優秀であったことを示唆しています。

什分の一は罰金の支払いにあてられるのですか?

いいえ。罰金は投資利益から支払われます。

今回の罰金は、教会の使命の資金調達に影響するのでしょうか?

いいえ。罰金は投資収益から支払われるため、教会の使命の資金調達に影響を与えることはありません。

エンサインピーク・アドバイザーズ社に対して、さらなる調査が行われるでしょうか?

確かにその可能性はあります。今回問題となったEPAファンドは大規模です。そのため、今後も監視の目が向けられることになるでしょう。

さらに、EPAを非難する人たちは、IRSと上院財政委員会の両方からEPAを調査させようとしています。しかし、専門家によると、これらの動きには法的なメリットがなく、対処される可能性は低いと言います。

EPA に対する SEC の懸念は完全に解決されており、EPA の現在の報告方法は、 SEC の要件を完全に遵守しています。

このような罰金はよくあることだと思いますが、なぜこれほどまでに報道されるようになったのでしょうか?

各報道機関がなぜこのように報道することになったのかは推測するしかありませんが、メディアの専門家として、この記事には問題の深刻さや希少性というよりも、ジャーナリストにとって魅力的な要素がいくつもあるとみているのでしょう。

末日聖徒イエス・キリスト教会は、多くのアメリカ人にとっていまだに好奇心の対象です。その結果、見出しで教会に言及できる記事は、より多くのアクセスを得ることができます。また、教会は道徳的な問題に対する立ち位置は、文化戦争に関する議論の的として利用することができ、ジャーナリストと読者両方の興味と行動を駆り立てることできます。さらに、EPAは大規模なファンドと考えられ、多額の資金を管理しています。 これらの理由から、この件はニュース性があるのでしょう。

今後、こうした問題を回避するために、エンサインピーク ・アドバイザーズ社はどのような変更を行ったのでしょうか?

今回の件は限定的なものでした。そして、これはもう3年以上前から修正されています。弁護士の助言に基づく開示要件について誤りがあったことは残念ですが、25 年以上の歴史の中で、EPA が開示要件について何らかの誤りを犯すことは、おそらく避けられないことだったでしょう。しかし、EPA のコンプライアンスに関する全体的な記録は、非の打ちどころがありません。

この調査と罰則は、教会の優先順位と価値観について何を物語っているのでしょうか?

特にありません。教会はその使命を果たすために基金に投資しています。昨年の総額10億ドル近くにのぼる人道支援も含まれています。

教会側が反省の意を表明したことは適切でしたが、規制が非常に複雑であるため、コンプライアンスに最善を尽くしている組織であっても、このような罰金はよくあることです。

編集後記: 今回の件で、教会について怒りを感じたり、不安になる人もいるかと思います。その思いを祈りで神様に伝えてください。皆さんが神様を信頼して信仰を持って歩み続けるよう祈っています。