ニューヨーク・タイムスのコラムニストであり、ベストセラー著者でもある、ブルース・ファイラーは、2016年に開催されたルーツテック(「家族歴史フェア:家族発見の日」)での基調講演者でした。説得力のある演説を終えると、彼はわたしの横に座り、子供に物語を語り聞かせることを含む、家族を強めるための3つの秘訣について話してくれました。彼はまた、父親であること、癌、そしてその両方がいかに彼の人生に影響を与えてきたかについて、率直に話しました。彼のスピーチと、会話は、洞察力に富み、刺激を与えてくれるものでした。

癌や家族について話すブルース・ファイラー

2016年ルーツテックでインタビューに答えるブルース・ファイラー
(この写真はEvalogue.Life より)

ソルトレークシティー− 物語を話すことは芸術であり、ブルース・ファイラーはそのことを熟知しています。しかし初めから、プロの語り手になろうと思っていたわけではありませんでした。ファイラーは、ジョージア州に生まれ育ち、エール大学で学びました。彼は聖地を歩き、発見を本に記し、その結果「聖書を歩く」と「Finding God」の2冊が誕生しました。 彼は、ルーツテックでの演説の中で、しばしば自分のことを「歩く人」と呼びました。しかしそれは、2008年のある日、彼が足に痛みを感じるまでのことでした。医者に診てもらい、その診察結果により、彼のすべてが変わりました。彼の足には、悪性の腫瘍の癌があることがわかりました。

ストーリーを大切に

彼はそのときに、当時3歳だった双子の娘たちと、父親として一緒にやりたいと思っていたことをすべて行えないかもしれないことを悟りました。ある日娘たちが元気いっぱいにはしゃぎながら、新しいダンスのステップをパパに見せようと部屋に入って来たときのことを話してくれました。「そのとき、わたしの心はズタズタに裂けました」と、教えてくれました。ファイラーは、娘たちとできないであろう散歩、聞くことができない彼女たちのストーリー、娘たちから紹介してもらいたかったボーイフレンドたち、そして娘たちをエスコートできないバージンロードなど、自分が経験できないであろうことについてあれこれ考え始めました。

その後彼は、娘たちの人生に関わる他の男性たちや、父親たちと話し始め、娘たちのためにアドバイスを書き留め出しました。9ヶ月の抗がん治療の間、そのプロジェクトに一生懸命励み、いくつかの新しい発見をしました。彼は「わたしは、自分のストーリーを書き始めました」と言いました。 その過程で、彼は自分の祖父母について、知っていることや知らなかったことを見い出しました。彼の祖父についての生い立ちが書かれたものは残されていませんが、祖父が趣味で集めた追悼詩文が3冊残されていました。「それは、祖父の人生について書かれたものではありませんでしたが、彼について知るには十分な記録であること」にファイラーは気づきました。その瞬間、彼は大きな結論にたどり着きました。「ストーリーテラーのわたしから、ストーリーテラーのみなさんにお話ししたいことがあります。それは、ストーリー全体を知る必要はないということです!」と彼は熱意をもって語りました。そしてルーツテックの聴衆に、今できるところからスタートするよう励ましました。

このルーツテックの期間に、ファイラーは手術を受け、奇跡的に癌を取り除くことに成功しました。彼は、2年間松葉杖を使って歩かなければなりませんでしたが、現在は癌はありません。この7-8年間、彼は家族のつながりを強めるために、働きかけてきたことがあります。「家族のつながりには何が必要なのでしょうか?秘訣は何ですか?」の質問に対し、彼の答えはこうです。「たくさん話すことです。日常的な話しではなく、家族の一員として大切なこと、もっと深い話しをすることです。」

 

家族を強めるための秘訣

ファイラーは、家族を強めるための秘訣として、以下の3つを上げました。

  1. 家族の目標を書く
  2. ストーリーを順々に語るゲームをする。車の中で沈黙が続かないようにします。何か楽しいことについて話したり、家族に関わる事柄について話し合いましょう。
  3. 家族の歴史について話す。「子供は、自分が何かに関わっていると感じるときに、幸福を感じます」とファイラーは言いました。

私たちのインタビューで、わたしは彼の3つの秘訣の中でも、特にストーリーを語るゲームについてもっと知りたいと思いました。ファイラーは、「あなたが信じることを伝えるためにストーリーを話すこと」は、特に子供たちに効果的だと説明しました。また彼は「ストーリーはとても多くのものに対し、仲介的な役割を果たします」と言いました。ストーリーを語るゲームは、夕飯を一緒に食べるときに行うことができます。夕飯を一緒に食べることは、不可欠で重要であると、決まり文句のように誰もが話しますが、やっぱりそれは実際に大切なことだと話しました。彼は、現在11歳の娘たちと夕飯を一緒に食べるようにしています。「わたしたちは、急いで夕飯を食べたり、テレビを見ながら食事をしたりすることが よくあります。そんなことをしないでください。良い会話や話をするのに、10分さえあればいいのです。多くの人たちは、それをしていませんが、するべきなのです」と彼は言いました。

彼はまた、車で旅行するときの移動時間は、ストーリーを語る最高の機会であると付け加え、1990年にエモリー大学のマーシャル・デュークの研究について話しました。その研究によれば、子供たちがいいお話ばかりでなく、厳しい現実も含まれた家族の歴史について知ってるなら、子供たちはより強い意義を見い出し、自分たちのまわりの環境をもっとコントロールする力があることがわかってきています。次の提案は、わたし自身が肝に銘じたいことです。「旅行へ行くときに、ビデオばかり撮るのではなく、子供たちに旅行について話してもらったり、書いてもらってください」とファイラーは提案しました。

彼は、車での小旅行について話しました。ファイラーは家族が眠っているお墓に旅行に行くことを提案したのです。彼は思い出し笑いをして、続けました。家族はファイラーがお墓への「小旅行」を提案したのが馬鹿馬鹿しいと感じていました。しかしお墓へ向かう途中、車の中でストーリーを話し合ったことで、このお墓参り旅行はとても価値のある時間になったとのでした。

子供に家族の歴史を語るプロセスには、思いがけない贈り物があるとファイラーは言いました。あなたは、人生に価値を見い出すことでしょう。「わたしたちは、サンドイッチ世代(親と子供の世話をしなければならない世代)ですが、その中に価値を見い出すことができるでしょう。子供たちや孫たちのために、わたしたちのストーリーを修正したりまとめることができます。このような過程の中には、あなたが気づいている以上の価値があります。」

 

 

この記事はRachel J. Trotterによって書かれevalogue.lifeに投稿されたものです。