子どもは大人の思い通りになりません。頭では分かっていても、目のまえで子どもが親や教師の期待に反することをした時、また子どもが自分の可能性を伸ばそうと努力していない時、ただ怒る以外に効果的な方法はあるのでしょうか?
この記事が、親や教師や指導者など、子どもと接する機会がある人の助けになればと願っています。

怒ると疲れる

子どもにイライラしたり怒ったりする原因は様々です。勉強しない、部屋を片づけない、スマホやゲームを決められた時間に終わらせない、家の手伝いをまったくしないなどがあります。

イライラしてしまうのは、親や指導者が予想していた通りになることを子どもに期待しているからではないでしょうか?もちろん、子供のためを思って大人が理想を持つことは悪いことではありません。しかし、子どもの年齢が高くなるにつれ、自分でできることが増えれば増えるほど、大人の期待も大きくなっているように感じます。

期待していた通りにならなかった時、大人はがっかりしてしまいます。そこからイライラしてしまいます。大切なルールや習慣を身につけられるように大人が気持ちを本気で伝える必要があることもあります。

しかし、怒ると疲れますよね。大人の期待に応えない子どもを見る度に怒っていると、だんだんその子供のことをイライラの対象としてしか見れなくなってしまいます。ネガティブな部分にだけ目がいくようになります。何より、怒った後に残るイヤな気持ちがその後の生活や子どもとの関係に支障を与えることもあります。

ある宣教師の話

とある伝道部(宣教師が伝道するエリア)にいた1人の宣教師の振る舞いが、当時その伝道部を管理する伝道部会長をしていたハーマン兄弟をがっかりさせたことがありました。その振る舞いは善い行いではなかったのです。それを聞いて、伝道部会長は強めの言葉で「何をしたって?」と言ってしまいました。

しかし、目の前にいた姉妹宣教師(女性の宣教師)に3回深呼吸をして祈ることをアドバイスされました。その伝道部会長は当時の経験から次のように話しています。

誰かにがっかりさせられたとき、私たちは衝動的に否定的な反応をしてしまいがちです。すると、悪い判断につながることがあります。青少年が期待に応えてくれないとき、アラウージョ姉妹が私に教えてくれたように、深呼吸をして、お祈りすることができるのです。 

ポール・M・ハーマン(中央若い男性諮問評議会会員)

イライラしないために

いつもは難しいかもしれませんが、イライラは訓練と意識でコントロールすることができるようになります。先述したようにハーマン兄弟が若い姉妹宣教師からアドバイスされた、複数回の深呼吸と祈りで、イライラから解放されることができます。例えそれが一時的でも、イライラから逃れられることで平安やポジティブさが心に入りやすくなります。

【イライラ対策】

  • 怒り過ぎない、過干渉にならない

子どもが大人の期待に応えていないことから何かを伝えたり叱る必要があるなら、長い時間を掛けないようにしてみてください。必要なことを短く言います。また干渉し過ぎると子供の問題を大人が自分の事と捕らえすぎてしまい、子供をコントロールしようとしてしまいます。

  • ほかの子と比較しない

よそはよそ、うちはうち。自分の時はこうだったという経験も子どもを責める手段になるなら、経験を持ち出さないようにしましょう。どんなに立派な過去も価値のある経験も、子どもを責めることでその子の自尊心を奪ってしまうなら、シェアしない方がいいです。

  • 親の一人時間を設ける

これは特に普段子どもを世話している人に必要です。自分のための時間を設け、リフレッシュすることで、ゆとりを持って子どもと接することができます。

  • 放っておかない、腫れ物に触るように接しない

関わるとイライラするから、と子どもを放っておくことはまた違います。子どもは大人からの関心が欲しいです。適切な叱責は正しいコミュニケーションとなって、お互いの信頼関係を築きます。適度な距離を見つける努力を辞めないでください。

子どもが小さいうちはあまり目が話せないかもしれません。しかし、安全な環境で子どもも大人もそれぞれが自由にできる時間があったり、一緒に楽しめる時間があると、イライラから解放されやすくなるでしょう。

子どもを必要以上に傷つけないために

自制することは大人でも難しいので、未熟な子ども達が完璧に自制することはとっても難しいことです。そんな子どもと接する大人は、子どもにも冷静に伝えましょう。

頭ごなしに怒ったり決めつけて説教すると、子どもは大人に本当のことを話さなくなります

一歩引いて冷静になることで、物事の全体像が見えてきます。そのうえで、説教ではなく「質問」をするようにしましょう。そして情報を集めたら、過去ではなく未来に目を向けて、一緒に改善するための新しい計画を立ててみてください。

ハーマン兄弟の言葉

未熟な子どもが親や指導者の期待に応えていないとき、あら探しをするのではなく、ハーマン兄弟の言葉を実践してみてください。

まるで彼らが理想通りに生きているかのように愛してください。期待に応えられていない青少年こそ、リーダーや親とのポジティブな関係を何よりも必要としています。

ポール・M・ハーマン

子ども達も自分ができていないことは分かっているかもしれません。そんな中で大人にできていないことを何度も責められたりがっかりされると、子どもが自身の評価を下げてしまうでしょう。

ハーマン兄弟は、新約聖書の話を使って子供と信頼関係を築くことの大切さを教えている。

使徒たちがガリラヤ湖で嵐に遭っていたとき、もし彼らがイエスと関係を築いていなかったら、救いを求めてイエスのもとに行ったでしょうか?
彼らは「主が自分たちを愛してくださっている」と知っていたからこそ、イエスは彼らを助け、教えることができたのです。そしてイエスはこう言われました。「静まれ、黙れ」(マルコによる福音書4章39節)。

テレビでも取り上げられた大家族の岸家族は末日聖徒イエス・キリスト教会の会員です。そのお母さんである岸姉妹が、自身のSNSでシェアした言葉も、大人の期待に応えていない子どもにどう接したらいいかを教えてくれています。

「子どもがいい子でいるときに愛するのは簡単です。でも、子どもを愛するのが難しいと感じる時は、その子が最も愛を必要としている時です。」

児童精神科医の故・佐々木正美先生は、自身の著書『この子はこの子のままでいいと思える本』の中で、こう述べています。

いい子だから、かわいがるのではありません。かわいがられるから、いいこになるのです。  

佐々木正美

一進一退の子育て

子育てをする中で、わたしは上記のアドバイスと逆のことをし、子どもを傷つけ自己嫌悪に陥る、ということを繰り返してきました。アンガーマネージメントに出会い、学んで実践して見たこともありましたが、この技術を確実に取り入れることはわたしにとっては難題でした。しかし、アンガーマネージメントを試してみたおかげで、自分はなんで怒っているか、それは自分のためか子どものためか、と自分の怒りの原因と向き合うようになりました。

子どもに対して湧き上がる怒りを完全にコントロールすることは未だに難しいと感じていますが、自分の怒りに向き合うことで、怒ることから叱ることに変わってきていると思います。

アンガーマネージメント以外にもいろいろ子育てについて学んだり考えたりしましたが、子どもに変化はあまりありませんでした。この記事を書いていても、親の期待に、親の思っているように子どもが答えてくれることは当たり前ではないと感じています。

しかし、ハーマン兄弟の子どもたちが「理想通り生きているかのように接する」という考えには、まさしく目からうろこでした。そして、愛することが難しい状態の子どもはまさしく愛されることを必要としているという言葉は、わたしがこれまで子ども達と接してきた方法のダメだった部分が浮き彫りになりました。

子どもは自分の分身ではなく、別の人格の人間と意識することもわたしには助けになりました。子どもと適切な距離を見つける指針になることが多くなりました。

まとめ

期待に応えていない子どもと向き合うことは本当に苦労します。大人は忍耐を試されます。しかし、子どもが自己肯定感を高めて本来の能力を発揮するためには、大人の理解と協力は不可欠です。日々、子どものために時間と労力を捧げている大人の皆さんの働きと模範に感謝します。この記事から、子どもとの時間を楽しく穏やかにするヒントを得られるように祈っています。