「学ぶために入り、仕えるために出て行く」というモットーを掲げるブリガム・ヤング大学ハワイ校は、末日聖徒イエス・キリスト教会によって設立された大学の一つです。太平洋の島々からも便のいいハワイにあり、多様な民族性や文化を誇る学校です。そのブリガム・ヤング大学ハワイ校について、少しご紹介します。

 

歴史

ブリガム・ヤング大学ハワイ校の歴史は、当時末日聖徒イエス・キリスト教会の宣教師としてハワイを訪れたデビッド・O・マッケイから始まります。

1921年2月7日、宣教師のデビッド・O・マッケイ長老とヒュー・J・キャノン長老は、オアフ島での国旗掲揚に参加しました。そこで、マッケイ長老は、太平洋での、教会の霊的、そして教育的中心としてオアフ島ライエに建てるべき学校について啓示を受けました。30年後、末日聖徒イエス・キリスト教会の大管長として召されたマッケイ長老は、30年前の啓示を実現するために動き始めます。それから4年後の1955年2月12日に、デビッド・O・マッケイ大管長は、ライエでブリガム・ヤング大学の起工をし、30年前に見た啓示からこの大学について預言を残しました。

学校の建設に携わったのは奉仕宣教師たちで、この預言の後すぐに建設が始まりました。建設のさなかから大学の講義は戦利余剰品施設で始められ、153名の生徒が大学生活をスタートさせました。学校側の職員はわずか20名でした。それから、1958年12月17日に、デビッド・O・マッケイ大管長によって大学構内最初の建物が封建されるまでに、およそ280,000時間が費やされました。このころには生徒数も1200名まで増えました。

翌年の1959年には、ポリネシアの文化をつなぎ守るために、それらを学ぶ学部が設立されました。ポリネシアの文化を紹介する施設としてポリネシア文化センターが設立されたのは1963年のことでした。

以来、ブリガム・ヤング大学ハワイ校とポリネシア文化センターは密接な関係にあり、共に生徒たちの見聞を広め、学ぶ機会を与え続けてきました。

デビッド・O・マッケイ大管長の預言に従い、ブリガム・ヤング大学ハワイ校は生徒たちに様々な機会を提供してきています。バスケットボールやバレーボール、クロスカントリーなどのスポーツチームを始め、サルサバンドやオーケストラ、また劇団なども生徒たちの活躍の場となっています。

 

デビッド・O・マッケイの預言

1955年にされたこの学校についての預言の内容は、こういったものでした。

「この大学、神殿、そしてこのライエの街が、宣教活動の一要素として、何千、何万ではなく、何百万ものこの街の重要性を知ろうとやってくる人々に影響を及ぼすであろう。」

当時ハワイを訪れる人々の数は、一年間に11万人ほどでしたが、1963年にポリネシア文化センターがオープンしてから、ライエを訪れる人の数は3000万人にもなりました。

「世界に必要なのは、売り買いされることのなく、真実を軽んじることを蔑むような、偽りのない黄金のような人材だ。」このようにデビッド・O・マッケイ大管長は話しました。「そしてこの学校はまさにその人材を生み出す場所になる。それ以上に、彼らは指導者となるだろう。指導者に!この島だけでなく、どこでも。世界中が彼らに飢えている。この学校から出て行くのは、国際的な平和を確立するのに必要な影響力を持つ男女だ。」

この預言は、今でも大学のディボーショナルや講義でも聞かれ、この預言を成就するための機会が多く与えられています。

ブリガム・ヤング大学ハワイ校は、アメリカ国内トップ大学のランキングに何年にもわたってランクインしており、教育的にも霊的にも預言を成就するような大学に成長してきたと言えます。ハワイならではの校風や、この大学ならではの取り組みが生徒たちの成長に大きく貢献しています。

 

校風・特色

宗教

ブリガム・ヤング大学は、ハワイを含め、西アメリカに3つの分校があり、それぞれユタ州とアイダホ州に位置しています。末日聖徒イエス・キリスト教会によって設立されたので、なんといっても大きな特色は宗教の講義と言えるでしょう。大学の講義の中で、モルモン教とも呼ばれるこの教会の福音に関する基本的な講義は必須です。また、オナーコードと呼ばれる校則のような規定もあります。この規定は、末日聖徒イエス・キリスト教会の教えにのっとって作成されているので、教会の教義を学ぶことはこの規定をよりよく理解し、自分自身を守ることに役立ちます。詳しく言えば、オナーコードの中には、大学構内での飲酒、喫煙の禁止や、推奨される服装の基準などが示されています。門限や寮間の行き来などに関する規定もあります。この規定によって、大学内では秩序が保ち、マッケイ大管長の言う通り霊的な影響力を持つ人々が集うことのできる場所にするのがこの規定のねらいです。

ブリガム・ヤング大学3校とも、このような宗教的な特色がありますが、ハワイ校にはハワイ校ならではの校風もあります。

民族の多様性

ハワイ校には、ポリネシア各国を含め多くの国から生徒たちがやってきます。全体の生徒数の約46パーセントはアメリカ以外の70カ国から来ています。多くの民族があつまるハワイ校は、異文化交流にはもってこいの場所と言えると思います。外国の文化に触れることで、自分の文化をより深く知ることができたり、いままで当たり前と思っていたことがそうではないと知る機会があったりと、新しい一面が発見できるのもこの大学の良い特色ではないでしょうか。

ハワイ校は、他の2校に比べ小さな大学です。そのため、クラスは少人数で行われ、学年が進めば学部の教授たちとも個人的な話ができるほど近しくなれるのもこの大学のいいところです。名前と顔を覚えてもらい、課題の相談や試験の質問に行ったりと、親密なやりとりができることで、教育的にも高い成果をあげています。

そしてなにより、ポリネシアの文化についてこれほどまで深く学べる大学は他にはないのではないかと思います。ハワイ校には、ポリネシア文化センターが隣接しています。文化センターといっても博物館というよりはアミューズメントパークに近く、実際のポリネシアの文化をショーを見たり、やってみたりして体感できる場所です。

留学生のためのプログラム

ブリガム・ヤング大学ハワイ校には、付属の英語学校がありません。しかし、英語を母国語としない外国人留学生のために、多くのサポートプログラムが存在します。そのひとつが、EIL(English as International Language)というもので、他の一般的な大学とは違い、外国人のための英語クラスを大学入学後に受けます。EILには、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの授業の他に文化の授業があり、アメリカの大学生として知っておくべきことを教えてもらいます。例えば、日本人の生徒にとって手をあげて質問する、授業中に発言するといったことはそう簡単ではありませんが、アメリカの大学生になったからにはそれを進んでしなければあとあと困るだとか、ほかにも小切手の書き方、ソーシャルセキュリティーカード(社会保障カード)の扱い方など、アメリカで生活する上で知っておくべき基本的なことを教えてもらえる場所です。EILは、大学入学が決まった後で組み分けのテストを受け、点数に応じて各クラスに振り分けられます。そこで望む学科の授業に入ったときに英語力がなくてついていけない、ということがないように英語力の底上げを計る場でもあります。

留学生に対するサポートは、ほかにも帰国するチケットを取るのを手伝ってくれるところや、インターンシップを斡旋してくれるところ、ビザなどの手続きを手伝ってくれるところなど、数多くの部署があります。ホームシックになってしまった生徒を積極的に受け入れるカウンセリングセンターもサポートのひとつです。

 

ポリネシア文化センター

ポリネシア文化センターは、ブリガム・ヤング大学ハワイ校のすぐ隣にあります。職員のほとんどがブリガム・ヤング大学ハワイ校の学生です。このセンターは、設立以来、オアフ島一有名な娯楽施設として知られています。サモア・アオテアロア(ニュージーランド)、フィジー、ハワイ、タヒチ、トンガ、そしてイースター島の文化が生徒たちによって紹介されており、その国々独特のダンスや歴史、食べ物、住居や風習などをショーやツアーガイドを通じて見たり、また実際に体験することもできます。ハワイ村と呼ばれるハワイ島の展示場所ではフラの歴史のショーをみたり、実際に踊ってみる活動が人気です。センターでの一日を締めくくるナイトショーは、ポリネシアの文化の中を生きるマナという男性の一生を描いたストーリーになっていて、これもプロ顔負けのダンスを学生たちが披露します。

このポリネシア文化センターは、大学の生徒たちに働く場所と、経験を提供しています。学生のアルバイトとはいえ、世界各国からのゲストに精一杯のおもてなしをしようとする誠意が買われ、何度も足を運ぶお客様も多くいます。このセンターで働くことで、奨学金をもらっている生徒も多くいるため、働く場所と機会を与えてくれるお客様に直接お礼の気持ちを示せる場所だと生徒たちにも人気の高い施設です。また、学生だからという甘えを取り除いた接客トレーニングは、その後の生徒たちのスキルになり、就職活動や就職後にも武器となると高い評価を受けています。

 

体験談

わたしは、ブリガム・ヤング大学ハワイ校心理学部を卒業しました。個人的なことを言わせていただけるなら、この大学で心理学を学んで本当によかったと思っています。ブリガム・ヤング大学について少し知っている方は、ハワイは学力レベルが低い、校風が適当で流されやすいなどというイメージを持っている方が多いのではないかと思います。卒業生としてひとつ言えることがあるとすれば、ハワイ校での大学生活は自分次第でどうにでもなるということです。

ハワイという開放的な雰囲気に魅せられて入学した生徒は、どうしても遊びに走ってしまい、成績が上がらない、ということもあるでしょう。ただ、それは環境や大学のせいではないのです。

この学校では、本当に多くの機会が提供されています。しかし、それらの情報が積極的に手元に舞い込んでくることは多くありません。自分で必要なもの、興味のあるものを探しにいかなければいけません。

わたしの友人のひとりは、ビジネスプランをプレゼンテーションとして発表し、グランプリに選ばれればそのプランについての資金援助を受けられるという機会を探し当て、グランプリに選ばれたことで、貧困で苦しむ子供たちにTシャツを届ける機会に恵まれました。また他の友人は、母国コンゴで人材を育てるべく、コンベンションを行うための資金集め、人材集め、そしてコンベンションの計画からゲストの手配までを、指導者のサポートのもと実現しました。

「求めよ、そうすれば与えられるであろう」(マタイによる福音書7章7節)と聖書にあるとおり、この学校では求める者は多くを与えられ、求めない者は多くを失っていきます。わたし自身、それに気づくのに大学生活の半分を費やしましたが、これに気がついてからの大学生活は本当に充実したものでした。

大学に隣接するポリネシア文化センターで日本語ツアーガイドとして1年と少し働く機会もありましたが、そこで得た知識や、接客のスキル、お客様のニーズに応えようとする姿勢などは、その後社会でとても役に立っていますし、上司や同僚から褒められることも度々あります。

たった数年いただけで、今まで名前も知らなかったような国々の人々と友達になり、文化を学ぶこともできました。文化を大切にする大学なので、今まで嫌いだと思っていた日本の文化や慣習にも興味を持つようになり、結果、多くの発見を得ました。

「こんなことしてみたいな」、これが叶う場所が、ブリガム・ヤング大学ハワイ校です。探し物がみつかる場所です。ただ、あなた次第なのです。

わたしの在籍していた心理学部はとても小さな学部でしたが、おかげで少人数でなければできない体験も多くしました。今思えば、有名大学の大きな講義室の大勢の一人として、ただ講義を聞きテストを受ける大学生活とは比べ物にならないほどたくさんの利点があり、小さな学校にも関わらず素晴らしい教授に囲まれ、本当に多くのものを得てきました。

マッケイ大管長の言う通り、この大学は指導者になり得る人材を育てています。ここで得られる機会をものにして、自分がなり得る最高の人材として母国に帰る人々をたくさん見て来たわたしは、この大学の卒業生であることを誇りに思っています。