キャメロンを赦し再び家族で再会することに希望を持つウィリアムス家族

 

前半のお話
家族と車で出かけていた時、クリス・ウィリアムスは酔っ払った10代の少年が運転する暴走車に追突され、妻と次男、そして家族で唯一の女の子を失います。
自身も怪我を負い、三男は生死の境をさまよう中、クリスの頭にはっきりと聞こえたのは「赦しなさい。」という言葉でした。クリスは悲しみと葛藤を抱えながらも、その神の導きに従うことを選びます。

広がる希望

わたしが担架の上で悲惨な状態にありながらも、まだ10代の運転手を赦すように言ったことがニュースで報道されました。それが地域全体に影響を与えたのです。わたしの家族に降りかかった悲劇や、無条件に赦すことについて、報道陣はかなりの興味を示していました。月曜日の朝、わたしたちはメディアの要求に応じるために会見を開く事を決めました。

わたしたちは午後に病院の駐車場を出て、会見に向かいました。母にメモ帳と鉛筆を用意してもらい、わたしは急いで声明文を書こうとしました。家に近づくにつれ、パニックになりました。会見が始まる数分前に祈り、そして他の人の助けとなり利益となることを言えるように願いました。すぐに何を言えばいいのか分かりました。それは準備していたものとは全く違うものでした。それは短く簡単でしたが、救い主がわたしに話すように望まれていたことでした。

「これはわたしの家族にとってとても苦い杯ですが、地域の方々のあふれんばかりの深い愛と祈りにより、いつか全て解決することを知っています。わたしの愛する妻や子供達、そして親戚を代表して、わたしは皆さんに、もし心当たりがあるならば、優しさ、憐れみ、赦しの手を差し伸べるようにお願いします。バレンタインの日までそれを行っていただけますか?そしてもしよろしければ、その経験を書き出してください。わたしの残された2人の息子のためにラジオやテレビで紹介される住所にその手紙を送って下さいますか?息子たちとわたしから妻に贈るそれ以上のバレンタインの贈り物はないと思います。善良なみなさん一人一人の上に神の祝福がありますように。ありがとうございます。」

最初に記者会見でお願いした時には、簡単なお願いがどのような反響を呼ぶのか想像もしませんでした。わたしは世界中から親切、憐れみ、慈愛の手を差し伸べたときの経験を書き綴った何千もの手紙やメールをいただきました。何百通かの手紙には同じような一節が書かれていました。「あなたが自分にされたことを赦せるならば、わたしも赦すべきだと思います。」その後に、赦すために決意したことを教えてくれました。

 

赦し平安を得られるようひざまずいて祈るクリス

キャメロンとの対面

しばらくしてわたしはその運転手の名前はキャメロン・ホワイトであると知りました。彼のことをだんだんと知るうちに、救い主の彼に対する個人的な深い愛を感じました。それまでキリストの憐れみを感じたことはありました。主が気にかけて下さることを感じていました。赦すことや憐れみ、癒しの必要性を感じていました。それなのにキャメロン・ホワイトは神の息子であり、救い主は彼が再び御元に帰れるように強く望まれていることには気が付いていませんでした。キャメロンのことを考える時に、彼はもはや悲劇を招いた10代の少年ではなく、わたしの兄弟になったのです。

事件から4ヶ月経ち、聴取の時に初めてのキャメロンに会いました。キャメロンはオレンジのつなぎを着ていて、ゆっくりと法廷に入り、被告席に座りました。裁判が始まり申し立て内容が開示される中で、キャメロンとわたしは静かな瞬間を共有しました。わたしと目が合うと、キャメロンは口の動きで「ごめんなさい。」と言いました。わたしはなんとか引きつった笑顔を保ち、頷いてみせました。それまで、彼と会う時にどのような感情が沸き起こるのか心配でした。どう反応するのでしょうか。その瞬間に再び救い主の彼に対する愛や、彼の家族に対する愛を感じました。

時が経つにつれて、悲嘆にくれ、孤独感に苦しみました。それでも誰に頼るべきか知っていました。天父に祈る時に、苛立ちや怒りを投げつけ、「主と格闘」しました。その後、救い主イエス・キリストを思い起こし、謙遜にさせられました。主の模範、忍耐、長く堪え忍ばれたことを思い起こしたわたしは、自分の決断に忠実になり前に進む力をいただきました。

事故から2年後、わたしは少年院で働いているカウンセラーから電話をもらいました。彼女はキャメロンに関わり続けてきました。キャメロンがミシェル、ベン、アナの死がわたしの家族に与えた影響をより深く理解できるように助けてくれないかと頼んで来ました。そしてキャメロンが質問を用意しているので、直接彼と会って答えてくれないかと言いました。わたしは同意しました。

日程が決まりました。精神的によく準備しました。自分の考えをまとめながら言うべきことを考えました。事件が自分の人生にどのような影響を与えたかを書き出してみました。キャメロンに何を話していいのか分からず苦労しました。そして自分の表現力の足りない部分を補うために、導きを求めて断食し祈るべきだと感じました。

受付に着いてから、待合室の中でカウンセラーを待ちました。分厚い大きな防護ドアが開きました。カウンセラーが部屋に入ってきて優しく挨拶し、わたしにお礼を述べました。キャメロンが待っている部屋まで歩いている時に、心は静まり平安な気持ちが溢れるのを感じました。わたしはカウンセラーと2人だけで歩いてはいなかったのです。カウンセラーは早い足取りで小さな部屋に入りました。キャメロンはその部屋の中に座ってわたしたちを待っていました。

わたしたちは向きあって座りました。キャメロンは紙を広げて、事故から今までのわたしの生活について質問しました。わたしや息子たち、親戚に事故が与えた影響について尋ねました。彼はベン、アナとミチェルについて知りたがっていました。何を言ったかは覚えていませんが、落ち着いて率直に的を得た答えを言うことができたと思います。

そしてキャメロンは紙を置き、わたしの目をじっと見つめて言いました。「僕があなたの家族にしたことを、どうやって赦すことができたのですか?」わたしは身を乗り出して言いました。「わたしが赦したことについて見たこと、聞いたこと、読んだこと、それは全て救い主がわたしを助けてくださったことを表しています。」御霊が部屋を包み、その力はわたしたち2人の心を永遠の真理で貫いたかのようでした。イエス・キリストは純粋な愛でわたしたちを愛してくださいます。主はわたしたちが可能性に到達するように望んでいらっしゃるのです。

 

辛い赦しのプロセスを経て、キャメロンと向き合うクリス・ウィリアムス

一つとなる

その後、わたしの経験をモルモンメッセージのビデオクリップにする話が持ち上がりました。この経験が他の人生を祝福する可能性について話し合った結果、2010年の初めが最適だと判断しました。メッセージを練っている時に、キャメロンにも参加して欲しいと皆が思いました。少年院では厳しい制限があったので、わたしたちがどのようにそれを乗り越えられるか見当もつきませんでした。それから数日後、仮釈放期間を担当するスタッフから、キャメロンが服役の最後の数ヶ月を家で過ごしながら社会復帰の準備をすることを知らされました。わたしは彼らにキャメロンにモルモンメッセージに協力してもらいたいと訴えました。するとキャメロンが参加したければ構わないとのことでした。キャメロンとわたしが言葉を交わしてから1年が経とうとしていました。

その日彼に会ったとき、すぐに彼が前に会った時よりも幸せで希望に満ちていることが分かりました。わたしには彼が奇跡的な方法で癒されたことが分かりました。救い主の彼に対する愛を目の当たりにして、満ち足りた気持ちに包まれました。

わたしはキャメロンに、最後に会った時からどのように人生が変わったのかを、前もって熟考した通りに話しました。彼は今仕事や教育で目指していることを話してくれました。彼もあの悲劇の晩から、前に進もうとしていました。話している時に確かな平安を感じました。きっと天父も救い主の模範に従おうと努力する2人の息子たちを眺めて、顔に微笑みを浮かべていらっしゃたと思います。

試練のただなかにある時に、わたしは往往にして救い主からの迅速な祝福や結果を求めます。しかし他の価値あるものと同じで、結果が形になるのには時間がかかります。時として何年もかかることもあります。キャメロンとわたしがベンチに座り話している時に、事件から数年の間に起きた大きな変化に気がつきました。主の時に対するわたしの忍耐力が変わったのです。たとえ自分の祈りが思い通りに答えられなくても、はるかによい方法で答えられること、そしてそれを待つ価値があることをわたしは知ることができたのです。

主の教えは現代の多くの人に向けられています。「すべて重荷を負うて苦労している者は、私のもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うて、わたしには学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。わたしの重荷は負いやすく、わたしのくびきは軽いからである」(マタイ11:28ー29)。主は完全ですが、わたしは何者でもありません。しかし「 わたしを強くしてくださる方によって、何事でもできる」のです。(ピリピ4:13)

これはわたしの赦し、忘れること、前進、癒しの経験です。今日あなたは主の足元にどのような重荷を託しますか?
主をお招きしたあなたの人生には、奇跡が訪れるかもしれません。

 

クリス・ウィリアムズは、夫に先立たれたミケル・ジョーンズと再婚して2人の娘に恵まれました。ミケルは前夫との間に幼い2人の子供がいます。一家はソルトレーク市に住んでいます。クリスの物語の完全版は書籍「レットイットゴー」(英語)やDVD「ジャストレットゴー」(英語)で視聴することができます。どちらもデゼレトブックで入手可能です。

クリス・ウィリアムズの家族の事故について、また赦しへの道のりについてはモルモンメッセージのビデオクリップ(英語)の中でもご覧いただけます。

 

前半はこちらで読むことができます。

この記事はクリス・ウィリアムズによって書かれ、LDSLivingに投稿されたものを、前田美佳子が翻訳しました。