「教会の指導者が一般社会の政策決定にどこまで関与すべきかという境界線を、どこに引いたらいいのでしょうか?」と道徳観と社会への歩み寄りについてのスピーチのなかでダリン・H・オークスは問題提起しています。彼は末日聖徒イエス・キリスト教会の使徒の一人で、この教会の人々は時々モルモンとも呼ばれます。オークス長老は十二使徒の一人で、教会の指導者層の頂点に位置する人です。このスピーチは「宗教的な価値と公的な政策」と題され、1992年の2月29日にブリガム・ヤング大学のワシントンDCのマネジメント・ソサエティーで話されたものです。このスピーチは宗教と政策の問題を効果的に概観しています。
末日聖徒イエス・キリスト教会は政治的に中立です。どういう意味かというとたとえ当教会の候補者であってもそれだけの理由でその候補者を支持することをしません。教会員に特定の政党を支持するように勧めることもしません。合衆国の2大政党の両方に教会員がいますし、世界中のさまざまな政党に末日聖徒の政治家がいます。合衆国の政府においても両政党に属する教会員がいます。高い地位にある教会の指導者の間でも両政党に分かれます。たとえば教会員は時々共和党であると見られますが、その州の民主党の代表まで勤めた人がやがて教会の最高の執行機関である大管長会の役割をゆだねられました。
しかしながら、中立とは言っても道徳に関する問題についてははっきりと意見を述べる権利があります。それは教会としての自然な役割でもあります。「教会は党派心的にならずに地域社会や道徳に関して影響力があると思われる問題や教会の利害に直接関与する事柄について一つの組織としての立場で見解を述べる権利があります。」末日聖徒と政治的中立性についてを参照ください。
オークス長老のお話の中で、彼はアメリカ人の多くが抱いている見方とアルバニアやその他の共産主義の国々の人たちの見解とを比較しています。アルバニアは1967年にすべての教会の活動を禁止しました。しかし、そのような政策は意図した結果を生みませんでした。オークス長老ともう一人のモルモンの指導者がそこの政府の要人と会いましたが、彼らはその禁止が誤りであったことを認めました。彼らは今や教会を歓迎しています。というのは宗教を禁止してから国の道徳が乱れ始めたからです。オークス長老はその他の共産主義の国々でも同様なことが起こり教会が戻ってくるように招かれていると聞きました。
それとは対照的にアメリカ人は宗教は道徳の問題とは関係なく、そのことに関して関与すべきではないという見方をすることがあります。もちろん私たちの法律の多くが伝統的な宗教的な価値観に基づいています。たとえば殺人とか窃盗とかについての法律です。
道徳的な価値観はさまざまなところから来ています。教会の教えから来ている場合もあるでしょうし、政党の考えや、著名人、自分の模範にしている人物、家族などから来る場合もあるでしょう。ですから、政府が特定の価値観の源を除外視することは正しくありません。オークス長老は述べています。
「さて、公的な論議に教会が加わることに関してですが、教会ないしは教会の指導者が公的な機関に赴き、政策に関しての議論をする場合を考えます。その場合、彼らはほかの人たちと同じ基準に立って議論することを期待できるはずです。言い換えますと、もし教会か教会の指導者が法令のある点に関して賛成ないしは反対の立場を表明しようとするときには、その他の理解力のある団体ないしは個人の意見と同じように扱われるべきですし、その真価によってその是非が判断されるべきです。」
「同様に教会と教会の指導者は通常の公的な議論でほかの人たちがするのを認められているいるようなさまざまな角度から議論する自由が与えられるべきです。教会は道徳的なことに関してより高い権威から指示を受けられると主張することができますが、これらの道徳的な問題を特定の法令や政治的判断に適応したいとする意見を出すときには、不可避のこととして法令に関するあるいは政治的な判断と照らし合わせて批判され評価されるでしょう。ジェームズ・E・ウッドが看取したように、「不正、人種差別、性差別、国粋主義が宗教上の信念から来ているかもしれませんが、彼らが法令の改正や公的政策にそれを政治的に当てはめようとするときには決していつも自明なことだとは限りません。」
その源が何であれ、私たちの信条は自分たちにとっては信頼に値するものであることを覚えておくことが大切です。一国の価値判断はその国民の総体の意見を反映するものであるべきで、宗教を抜きにした価値判断であるべきではありません。法律は宗教的な人々を黙らせるためにあるのではなく、彼らを擁護するためにあるのです。
モルモンとその指導者は、ですから、道徳に関する問題について語り続けるでしょう。それはその問題が彼らの領域のことであり、ビジネスリーダーがビジネスに関することを語り、活動家が彼らの問題について語るのと同じです。それを黙らせることは宗教の自由を拘束されることです。それでは、彼らの立場を擁護して語る者がいなくなり、宗教的である者の価値が国家の計画から取り除かれることになってしまいます。
その他の資料:
教会の信条について末日聖徒イエス・キリスト教会(誤って友人やほかの宗派の人たちから「モルモン教会」と呼ばれます)の公式サイトで学んでください。
基本的な教会の信条について
聖書と対を成すもので、イエス・キリストのもう一つの証であるモルモン書を無料で請求することができます。