モルモン教における一夫多妻制の実施についての真実

モルモン教（正式名称は末日聖徒イエス・キリスト教会）がその歴史の中で実践した一夫多妻制についての絶え間ない誤解は、それが始まった時から教会員たちを悩ませてきました。この記事では、一夫多妻制について人々が持つ疑問に答えます。一夫多妻制が行われていた期間のこの教会の歴史と宗教的環境についてもお話します。

一夫多妻制は、現在では実践されていない

まず初めによくある誤解を解くために申しますと、現代では末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は一夫多妻制を行っていません。今では一夫多妻制は破門につながります。この教会の第15代大管長であるゴードン・B・ヒンクレーは、1998年10月に以下の声明を出しました。

「わたしは、この教会はいかなる意味でも一夫多妻を実行している人々とは関係がないことを、断言しておきたいと思います。そのようなことをしている人々は、この教会の会員ではありません。その大部分の人々は教会員であったこともありません。彼らは法律に違反しています。彼らは、自分でも法律に違反していることを知っています。彼らは法律に従って罰を受けるはずです 。もちろん、この教会はその点に関して、いかなる意味でも、法を執行する権限は保持していません。もしわたしたちの教会員の中に多妻結婚を実行している者が見つかった場合、その人は教会で課すことのできる罰則の中でも、最も重い罰である破門の処分を受けることになります。そのようなことを実行している人々は、法律に直接背いているだけでなく、この教会の律法にも違反しています。わたしたちの信仰箇条の一つにより、わたしたちはある拘束の下にあります。そこにはこう述べられています。『わたしたちは、王、大統領 、統治者、長官に従うべきこと、法律を守り、尊び、支えるべきことを信じる。』(信仰箇条第1章12条)　人は法律を守りつつ 、同時にそれを破るなどということはできないのです。『モルモン原理主義者』は存在しません。『モルモン』と『原理主義者』を一続きの語として使うこと自体、大きな矛盾なのです。」

当時と今の一夫多妻の合法性

ヒンクレー大管長のこの声明に、このように混乱する人もいるかもしれません。「アメリカ合衆国では一夫多妻はずっと違法だったのではないですか？」「当時、一夫多妻を実践していた人たちは法律を破っていたんでしょう？」簡単に答えればそうです。でも、これはそれほど単純なものではないのです。

当時の教会員たちがノーブーに住んでいた時、イリノイ州では重婚は違法でした。またユタにいた時は、反多妻結婚（その多くは反モルモンでした）への改革運動があり、多妻結婚は違法であると宣言されました。
多妻結婚をしていた多くの教会員、そしてこれは神様から命じられたことであると固く信じていた人々は、難しい立場に立たされました。このようにして、当時の教会員にとって多妻結婚の律法に従って生活することは、市民として反抗することになってしまったのです。

反一夫多妻法に反抗するという決断は、法と秩序への固い献身のある聖徒たちにとって痛ましい例外でした。意義深いことですが、教会員が法律に反抗することを選んだ際には、実際にはアメリカの伝統でもある市民的不服従に従っていました。南北戦争以前の時代を含む様々な機会に、アメリカ人は自らの基本的な価値観にそぐわない法律には、それに公然とそむくことを決めていたのです。…合法的と宣言されていても、法律はすべての（聖徒の）価値感に一致していたわけではなく、彼らはその求めるところに屈するよりもむしろ迫害、追放、投獄されることを望んだのです。（ジェームズ・B・アレンとグレン・M・レオナルド, 『Story of the Latter-day Saints』〔Salt Lake City:Deseret Book Company, 1992〕401）

当時の教会員は、多妻結婚を行う権利が、信教の自由を守るアメリカ合衆国憲法によって保護されていると感じていました。彼らは法廷でその権利について争い、最高裁判所まで持ち込みました。しかし、1879年に最高裁判所が多妻結婚に反対する法律を合憲としました。つまり人間の法律が神様の法律を否定しましたが、教会員は神様の法律が人間の法律よりも重要だと信じ、市民としての不服従を続けました。信仰に忠実な人々は、神様の法律に従うことが道義にかなっていると考えたのです。多妻結婚を行うことが神様からの戒めであると信じていたのなら、なぜ結果的に止めてしまったのでしょうか？単に不道徳を正当化する言い訳だったのでしょうか？

末日聖徒イエス・キリスト教会はかつて多妻結婚を行い、その後多妻結婚を止めたという両方の事実のために批判を受け続けています。
政府の圧力が一度高まったからといって、多妻結婚を止めてしまったのは教会の指導者の弱さではないかと言う人もいます。多妻結婚をしていた人々と、教会全体にも多くの苦悩があったので、多妻結婚が本当は神様の戒めではなかった、と批判する人もいます。さらには、もし指導者が途中であきらめてやめたのなら、神様は教会員の味方ではなかったのでしょう。

この考えに対する全面的な答えに興味がある方は、こちらの英語の出版物をご覧ください。この論争に対するシンプルで確かな答えは次の通りです。多妻結婚を行った人々は、神様がそれを命じたという強い確信を得た後にそれを実践しました。この確信は非常に個人的で疑う余地のないものでした。この件に関する個人の記録を見れば、それがすぐに分かります。周りの人が信じるかどうかにかかわらず、彼らは神様がその戒めを与えたと信じていたのです。

外から見ると、神様が多妻結婚をした人々を見捨てたように見えるかもしれませんが、この律法に従った人々には多くの祝福がありました。その祝福については後で説明しますが、まずは多妻結婚をした人々の個人的な話を見てみましょう。

一夫多妻制からの個人的な経験談

当時の末日聖徒イエス・キリスト教会の使徒であったジョン・テーラーは次のように記しています。

「わたしは常に徳について厳格な考えを抱いており、既婚男性としてこの多妻結婚をするということは自分にとって恐ろしいことでした。…このような原則を受け入れるようにわたしに仕向けることができたのは、神から与えられた知識、啓示のみでした。…わたしたち（十二使徒定員会）は、可能な限りこの嫌なことを先に延ばしていたように思います。」

ヴァン・ワゴナー，『Mormon Polygamy』，89

ジョセフ・スミスが暗殺された後、教会の大管長となったブリガム・ヤングは、多妻結婚の教義を初めて聞いたときの反応を次のように述べています。

「教会の兄弟たちの中には、ジョセフがこの教義を明かした時のわたしの気持ちを知っている人もいます。わたしは義務を回避するつもりも、命令に従わないつもりもありませんでしたが、生まれて初めて自分は墓に入りたいと思うようになり、その気持ちを長い間克服することができませんでした。そして、葬儀を見ると、その亡くなった人が羨ましくなり、これから自分が受ける苦悩を考え、なぜ自分があの棺の中にいないのかと思いました。それ以来、私は自分の信仰と向き合い、よく瞑想しました。そうでなければ強く死ぬことを望んでいたでしょう。」

ブリガム・ヤング、『Journal of Discourses』3:26

教会の改宗者であるマーガレット・クーパー・ウェストは、多妻結婚の律法に改宗したときの自身の経験を次のように記録しています。

「ある日、姉妹の一人がわたしに次のように尋ねました。『あなたは霊的な妻の教義（多妻結婚の意）を信じる？』わたしがいいえと言うと、彼女は『もしジョセフ兄弟があなたに、自分は啓示を受けたのであなたに霊的な妻になるべきだと言ってきたら、何と言う？と言いました。わたしはこう答えました。「その啓示と共にあなたは罰を受けるといいわ。」わたしは激怒して、たとえ主が天使に命じて私に伝えさせたとしても信じないと言いました。わたしは、それがアブラハムに彼の息子を捧げるよう命じた試練のように、自分への試練だと思ったのです。

そのようなことにわたしは心を悩ませていました。わたしの夫もそれが正しいと信じておらず、得をするのは悪魔だけに見えました。わたしは病気になり、また子供たちの何人かも病気になってしまい、教会に入ってから初めて医者を呼びました。わたしは死にそうになりましたが、病気になる前から自分が間違っていることに気付いていました。このようにわたしは改心しました。

夫とわたしが集会に行こうとして門を開けると、すべての創造物がわたしの目の前に広がりました。それはまるで野原の草のように無数に感じられました。わたしはアブラハム、イサク、ヤコブが日の栄えの律法に生きるのを見ました。それからジョセフと兄弟たちがわたしの前に現れ、彼らがこの教義がこの世代に実行されなければならないと言われたときに心臓を刺し貫かれたような痛みを、自分でも感じることができました。わたしは心の中で言いました。『もう十分です、わたしはこの教義を受け入れます。』」

時として、その教義を完全に受け入れるには時間がかかりました。この戒めだけでなく、ほかの戒めを守る人々も完全ではないので過ちを犯しました。タマー・ワッシュバーンは夫が二番目の妻をもらった後、たとえ自分がその女性を好きであっても、長い間苦しみました。彼女の娘は母親について伝記で次のように記しています。

「タマーは社交的な人で、たいていは非常に前向きですが、とても張り詰めた気持ちを抱くこともありました。二番目の妻、フローラの娘であるロレーナは次のように言いました。『タマーは多妻結婚をするということがどれほど大変か話してくれました。そしてわたしの母、フローラを愛してはいても、母に対しては長い間意地悪でした。彼女は強さを求めてしばしば祈り、神様は最終的に自分に打ち勝つ力を与えられました。その後、多妻結婚は試しではなくなり、母はフローラのこの世の親友の一人となりました。』

このような試練は、彼女が他の人たちとともに通過したほんの一部です。彼女たちは神様が生きておられ、神様が創造された人間と同じように心と肉体を持っていることを信じていました。神様が人間と話すという権利と特権を持っており、神様の御心を明らかにされたことを信じ、それを否定しませんでした。ただ問題は増えるばかりのようでした。

ジョセフ・スミス自身も多妻結婚を実施するという考えについて乗り気ではありませんでした。教義を回復するということについて、彼に明らかにされたことを発表するのをできるだけ引き延ばしました。
ロレンゾ・スノーは後に教会の第5代大管長となりましたが、ジョセフ・スミスが最初にその教義を彼に明らかにした時のことを記しています。ここからジョセフ自身がどのように感じていたかが分かります。

「1843年4月にわたしはヨーロッパ伝道部から帰還した。わたしがノーブーに到着した数日後のジョセフ・スミス大管長の家で、彼は個人的に少し話がしたいので散歩に出ないかとわたしに言った。日が暮れようとした頃だった。わたしたちは少し歩いて川岸の大きな丸太に腰かけた。彼はそこで複数の妻を持つことの教義について説明した。主が彼に明らかにされ、彼に女性たちを妻として結び固めるように命じられ、彼はそれに続く問題を予見し、その戒めから逃れようとしたとき、抜き身の剣を持った天の使いが彼の前に現われ、進んで戒めを守らないならば滅ぼしてしまうと脅したことを話した。

ロレンゾ・スノー宣誓供述書，1868年8月28日；ジョセフ・フィールディング・スミス引用，Blood Atonement and the Origin of Plural Marriage：A Discussion〔ミズーリ州インデペンデンス；Press of Zion’s Printing and Publishing Company,1905年〕，67－68

上記の記述から分かるのは、本当は誰も多妻結婚の律法を守りたくなかったということです。しかし、モルモン書にあるように、神様が特に命じられない限りは、1人以上の妻を持つことは神の戒めには反することなのです。

「したがって、わたしの同胞よ、わたしの言うことを聞き、主の御言葉に耳を傾けなさい。万軍の主はこう言われる。『あなたがたの中のどの男も、妻は一人しか持ってはならない。また、そばめは一人も持ってはならない。主なる神であるわたしは、婦人たちの貞節を喜ばしく思う。みだらな行いは、わたしの目に忌まわしいことである。さて、この民は、わたしの戒めを守らなければならない。さもなければ、地は民のためにのろわれるであろう。』万軍の主は言われる。『将来わたしのために子孫を起こしたいと思う時が来れば、わたしは民に命じよう。その命令がない間は、民はこれらのことに聞き従わなければならない』」。

ヤコブ2章27-30節

一夫一婦制の律法は、アメリカ合衆国社会においては不可欠な部分でした。教会の全ての会員は子供の時からそれについて教えられてきました。ですから、彼らが多妻結婚の律法に従うのは簡単なことではありませんでした。しかし、その律法に従うように召された人々は、それが本当に神様から与えられた戒めであったという個人的な証を与えられました。

一夫多妻制の終末

多妻結婚の律法に従うために多大な犠牲を払った後、末日聖徒の会員たちは最終的にはその実施を断念しました。教会の第4代大管長のウィルフォード・ウッドラフは、1890年に公式の宣言として知られる宣言を出しました。そこでは多妻結婚はもはや実施してはいけないということを発表しました。自らの信仰に対する多くの迫害を既に堪え忍んだ後に、なぜ教会員たちはこのタイミングで圧力に屈したのでしょうか。
批評家の見方とは違って、ウィルフォード・ウッドラフが多妻結婚に終止符を打ったのは、政府からの圧力ではありませんでした。何年もの間、この件に関して彼は神様の御旨について祈ってきました。
1800年代の終わり頃、ついに政府が教会を解体しようとし、教会員たちにとって最も神聖な建物である3つの神殿を含むすべてのものを没収するというところまできてしまいました。
このとき、熟考し、断食し、多くの祈りの答えとして、ウィルフォード・ウッドラフは、多妻結婚の律法を守り続けるのは教会にとってふさわしくないという啓示を、神様から受けました。神様はその律法に従うという戒めと容認を取りやめました。すでに多妻結婚をしていた人々は家族を養うという責任を持っていましたが、新たな多妻結婚は実施されませんでした。

公式の宣言の後、教会では説教壇や印刷物により一夫一婦制を推奨しました。例外として1890年から1904年にかけて、特にメキシコやカナダ（アメリカ合衆国の法律外）において新たな多妻結婚が執り行われました。
この間、アメリカ合衆国でも少数の多妻結婚が執り行われました。1904年に、教会は新たな多妻結婚を厳しく禁止しました。今日では、多妻結婚をしている人は教会の会員になることも、会員でいることもできません。（「ユタ州初期における多妻結婚と家族」より）

なぜ、教会員は多妻結婚を実施するように戒めを受けたのか？

神様が教会員たちにこの律法に従うように命じられたので、この質問に答える資格があるのは神様のみです。この疑問に関してこれ以上啓示は与えられていません。なぜ教会員たちがこの律法に従っていたのかについてわたしたちが答えられることは、ただ一つ、神様からそのように命じられたからです。なぜその戒めが与えられたかについては今日、誰も答えを持っていません。

後知恵ではありますが、この律法に従っていた教会員たちには明らかに多くの祝福がありました。従順であったことで受けた恩恵のいくつかについて考察するのは何かの参考になるかもしれません。
だからといって、これらの祝福のどれかがそもそも多妻結婚という戒めが与えられた特定な理由だと言っているわけではありません。

末日聖徒イエス・キリスト教会の会員は、神様に従順であることは永遠の原則であると信じています。目に見える祝福が神様への忠誠を証明し、神様との関係を強めることだけだとしても、神様の戒めに厳密に従うならば、従順であることは常に祝福をもたらすでしょう。当時の教会員たちにとって、多妻結婚の律法に従うことは、取り返しのつかないほどの孤立をもたらしました。これは明らかに大きな不利益でしたが、一方それは教会の中で一致の思いを強め、世の中と一線を画したのでした。これは教会が強くなり、会員の信仰を育む助けとなりました。

多妻結婚を実施している教会員のもう1つの結果は犠牲です。社会の反感を招く人生を生きることにより、教会員たちは道徳的で真っ直ぐなクリスチャンとしての評判を犠牲にすることを求められたのです。彼らは市民としての権利をはく奪され、何度も家から追い出され、すべての持ち物を失ってしまいました。多くの人々は西部への移動のさなかで愛する家族を亡くしました。その後、彼らはこれまで多くを犠牲にして守ってきたその律法に従うことを、神様はもう必要とされないということを告げられたのです。これはどれをとっても容易なことではありませんでした。ヘレン・マー・ホイットニーは、この律法に従うように召された人々の気持ちについての貴重な思いを次のように述べています。

「自分が進んでいる道は、神の御旨によるものであるという知識と確信を持っていない人々は、敵の手による略奪や、必要であれば死ぬこともあるこれらの苦しみや迫害のすべてに耐えることはできないでしょう。救い主が従順な者に約束された永遠の命と天国に比べたら、すべてのものは価値がない、と思わなければ、人格や評判を犠牲にし、家、土地、兄弟姉妹、妻、子供たちを手放すことはできなかったでしょう。この知識は苦しみ抜きには得ることができませんし、この世のすべての物を犠牲にすること無しに栄光を得ることはできません。末日には犠牲により主と聖約を交わした聖徒を主が集めるということが（書かれています）。そして一人一人は自分の犠牲が義なるアベルや忠実な父であるアブラハムのように受け入れられたということを知らなければなりません。すべてのモルモン教の会員はこれが本当であり、信仰により、祝福や特権が与えられるということを知っています。

ヘレン・マー・ホイットニー,『A Woman’s View:Helen Mar Whitney’s Reminiscences of Early Church History』ユタ州プロボ：BYU宗教研究センター，1999年，187

神様がなぜ多妻結婚の実施を命じられたかについて明らかにされているただ一つの理由は、モルモン書から上記に引用されているように、主御自身のために「子孫を起こ〔す〕」ためです。教義と聖約（教義の特別な点について神からジョセフ・スミスに与えられた啓示の集まり）の132章には主は次のように述べておられます。

「アブラハムは、その子孫とその腰から出た者について約束を受けた。―あなた、すなわちわたしの僕ジョセフは、その腰から出た者である―すなわち、彼らはこの世にいるかぎり続くということである。アブラハムとその子孫についてであるが、彼らはこの世の外でも続くであろう。この世でもこの世の外でも、彼らは星のように数限りなく続く。すなわち、たとえ海辺の砂を数えたとしても、彼らを数え尽くすことはできないであろう。この約束はあなたがたに与えられたものでもある。あなたがたはアブラハムから出ており、この約束はアブラハムに与えられたものだからである。この律法によってわたしの父の業は続いており、この業によって父は栄光を受けられるのである。それゆえ、あなたがたは行って、アブラハムの業を行いなさい。あなたがたはわたしの律法に入りなさい。そうすれば、救われるであろう。しかし、もしわたしの律法に入らなければ、あなたがたは、わたしの父がアブラハムに与えられた約束を受けることはできない。神がアブラハムに命じられたので、サラはアブラハムにハガルを与えて妻とした。彼女はなぜそうしたのであろうか。これが律法であったからである。そして、ハガルから多くの人が出た。それゆえ、ほかの数々の事柄とともに、これは約束を成就するものであった。」

教義と聖約132章30－34節

多妻結婚の律法を守ったアブラハム（旧約聖書には神様の承認により、ほかにもそれを行った預言者たちがいました）のこの会話は、神様がときどき民にこの律法に従うように命じられたということを示しています。これが文化的に不快、あるいは受け入れられないということは神様にとっては関係がないことなのです。なぜなら神様の律法は永遠に及ぶものだからです。神様が命じられるとき、それは守るべきものなのです。そうでなければ明確に禁じられるでしょう。

神様が初期の教会員たちに多妻結婚を命じられたとき、子孫を起こすというのが神様のただ一つの目的であったかどうかにかかわらず、確かに結果としてそうなりました。最初に多妻結婚の教義がジョセフ・スミスに明らかにされたとき、末日聖徒イエス・キリスト教会は若い巣立ったばかりの教会でした。指導者や会員たちはすべて改宗者でした。教会の忠実な会員は男性よりも女性の方が多くいました。一人の忠実な男性が複数の忠実な女性と結婚することにより、ずっと多くの忠実な世代がほかのどのような方法よりも短い期間で育ったのです。

当時は女性には社会で多くの機会が与えられず、技術が発達していないため家事に時間が多くとられた時代で、多妻結婚は多くの女性にほかに興味のあることを追求し、地域社会にあってほかの方法ではできなかった貢献をする機会を与えました。家事や子育ての責任は女性たちで分担し、多くの重荷を軽くすることができました。ユタ州では、女性の参政権は憲法改正のずっと前に与えられました。実際、ユタが州となろうとしていたとき、政府は既に与えられた女性の参政権の権利を撤廃する必要がありました。

多くの人々が今日考えているのとは反対に、だれも多妻結婚の律法に従うことを強制されませんでした。実際教会の会員の中でこの律法に従った人々はかなり低い割合でした。1870年の最高のときでも30%までで、その後は減少して行きました。また、女性は自分がしたくなければ結婚を強制されることはありませんでした。加えて、多妻結婚後に不幸であると感じた女性は離婚、再婚、あるいは独身でいることを自身の選択にまかされました。しかし男性にとっては、多妻結婚した妻と離婚することはそれほど簡単ではありませんでした。そのため難しい状況に陥った男性は、それを良い方向に持っていくように勧告されました。

もう一度言いますが、主は教会員たちに多妻結婚を実施するように命じられた目的を明らかにされませんでした。ですから今日、何か理由をつけて「○○という理由があったのでこれは戒めでした」ということは誰も言うことはできないのです。しかし、この律法に従順であった当時の教会員からもたらされた多くの恩恵を見ることは、非常に啓発的なものと言えるでしょう。この教会では初期の教会員たちの多妻結婚の前向きな結果をまとめて以下のように公式に記しています。

「多妻結婚の結果、忠実な末日聖徒の家庭に沢山の子供たちが生まれました。また多妻結婚は、19世紀のモルモン教の社会を様々な面で形作りました。結婚を望む全ての者に結婚の機会を与え、貧しい女性が結婚によって経済的に安定した男性の世帯に迎え入れられたために個人の財産格差は減少し、異民族間の結婚が増加したために、いろいろな国からの移民同士の絆が強くなったのです。多妻結婚によって、教会員たちの連帯感と結束力も強くなりました。彼らは自分たちのことを、外部の反対があっても神の戒めを実践する、聖約を負った『特異な民』と認識するようになりました。」

この記事はdwhiteによって書かれ、historyofmormonism.comに投稿されました。