大管長会(モルモン教の最高管理機関。大管長と2人の顧問で構成される)は、2016年7月8日の金曜日に日本札幌神殿が完成したと発表しました。2009年10月3日に建設が発表されたこの神殿は、文化の祭典の後、8月21日に奉献されました。神殿が奉献された後は、ふさわしい教会員のみが入ることを許されます。
アジアの建築物からヒントを得て建てられた札幌神殿は4500㎡の広さで、約4万㎡近い広大な敷地に建っており、同じ敷地内には他にも神殿会長(神殿と神殿の儀式を管理する指導者)の住居や、神殿宣教師(神殿の儀式を助けるボランティアの会員)の住居、そして札幌伝道部会長(北海道で布教活動をする若い宣教師たちを管理する指導者)の住居が建っています。
日本札幌神殿はアジア地区で8つ目、そして日本では1980年に奉献された東京神殿と、2000年に奉献された福岡神殿に次ぐ3つ目の神殿です。今日、12万7千人を超えるモルモン教の会員が267のワード及び支部(住んでいる場所に応じて分けられている教区の呼称)の中で奉仕しています。
以下のビデオで札幌神殿の興味深い建築詳細について学ぶことができます。まず設定をクリックし、サブタイトルで日本語を選択することによって、日本語の字幕でこのビデオを見ることができます。
下記に字幕の内容を掲載します。
日本札幌神殿の建築詳細
新しく奉献された札幌神殿は、末日聖徒イエス・キリスト教会によって建設された神殿の中でも、特に文化的な特徴を持つ神殿の一つです。神殿は日本特有の建築法によって建てられています。その中には日本の歴史、文化をモチーフとした象徴が神聖な形で表現されています。
外観
建築家は、外装に日本独特の印象を与えるために、神殿を国会議事堂の外装に似せて設計しました。建物の中央には大きな塔を構え、周りに4つの小さな塔を配置しました。どちらの建物にも共通して見られるのは、中央塔に5つの窓を3セット並べ、上に向かうにつれて窓のサイズを小さくしたデザインです。屋根は日本の伝統的な建築に見られる、「反(そり)屋根」を元に、角をそり上げるデザインに仕上げました。
和風のデザイン
神殿の内側を見る前に、日本特有の内装設計について学んでみましょう。まず、西洋のデザインとは異なり、日本の伝統的な内装は流体のようであり、部屋の大きさを開け閉めできる障子などで調整することができます。これらの仕切りは、一般的に不透明な障子紙で覆われた格子状の木製フレームで作られています。
また、それらの上に見える木製の小さな窓は、空気の流れと部屋間の光を増加させるために付け加えられました。大切な部屋の天井は、平らではなく、木の梁、絵画、または格天井で飾られました。新たに建設された札幌神殿の内装は、これらのデザインが全体的に取り入れられて建築されました。
木造部分
まず、日本独特のデザインの特徴の一つは、格子、欄間(らんま)、および格天井の使用です。神殿の壁のほとんどは固定されていますが、この木造部分では日本の伝統的な障子やふすまの雰囲気を再現しました。例えば、最初に入る儀式の部屋では、出入り口は伝統的な障子の雰囲気を表現するために、複雑な格子でスライド式に設計されました。また、出入り口の上には日本独特な彫刻が施された木製の欄間を配置しました。
ほとんどの神殿では、月の栄えの部屋から日の栄えの部屋は大きなカーテンで遮られています。札幌神殿ではカーテンではなく、日本に馴染み深い障子を連想させる不透明の材料で覆われたスライド式のドアを使用しています。また、ドアの周りには金属の格子がデザインされ、さらに日本独特なデザインでの仕上がりになりました。出入り口に加え、椅子、推薦状デスク、チャペルの木工、聖壇、ステンドグラスの窓などにも、同様の格子モチーフを取り入れました。
バプテスマフォントのデザインにも、石造りの壁や木製ドアと同じデザインを使用しています。興味深いことに、部屋の聖壇にある格子デザインは、椅子の側面にあるデザインと共通するところがあり、その椅子に座りながらも、すべての人が聖壇にいることを象徴しているようです。また、バプテスマフォントのドーム型天井を含め、儀式の部屋、結び固めの部屋、そして美しい日の栄えの部屋の天井を、日本独特な格間と木製の梁天井風デザインにしました。
模様とモチーフ
幾つかの伝統的な和柄やモチーフを神殿全体に取り入れました。最も人気のある日本のシンボルの一つ、「青海波」または波模様が外部石造物に使用されています。また、別の波の模様が神殿外装と結び固めの部屋の天井にあります。
日本文化で、波は力と回復力を表します。これらの特質は、神殿の聖約を保つことによって得られる力を象徴しています。加えて、雲のデザインが儀式の部屋と日の栄えの部屋の天井ドームにあります。
日本の伝統的な「麻の葉」と「七宝」と呼ばれる二つのデザインが、内装によく使われています。どちらのデザインも、美しく飾られたステンドガラスの窓に使用されています。「七宝」の模様がドア付近の木の壁、推薦状確認デスク、礼拝堂の教壇、カーペット、儀式の部屋の壁紙としても使われています。また、ステンシルの作業の中にも様々な部屋で用いられています。毎年大盛況の恒例ライラック祭りにちなんで、札幌でとても有名なライラックの花のモチーフが神殿内のあらゆる所で見られます。
この花のデザインが、バプテスマフォントの手すりや、儀式の部屋の木工に飾られています。結び固めの部屋と日の栄えの部屋にも見られるライラックのデザインは、円と四角形をモチーフにしています。このモチーフは、日本で家族や個人を識別する際に使った「家紋」をイメージして仕上げました。日の栄えの部屋と結び固めの部屋にあるシャンデリアと、中央にある日の栄えの部屋のテーブルも同様に、円と四角形のデザインを取り入れているのが見受けられます。
円は「永遠」を象徴し、四角形、または4つの角は「地球」を表しています。このように天と地が神殿の壁を通してつながるという象徴を示しています。また、神殿内のカーペットや内装設計には、日本の伝統的な植物の柄があります。待合室付近のカーペットには竹の葉を、そして 花嫁の控室には美しい桜の花を取り入れました。また、儀式の部屋にある座席のカバーにはイチョウの葉柄を取り入れています。
日本庭園
おそらく、札幌神殿の最も特有なところは、伝統的な石庭です。この美しい石庭は神殿の外と、待合室付近の階段の下にあります。石庭は 白い砂紋を描いた砂利に大きく突き出た岩を置くことにより、「奥深い自然の本質を模倣するよう」デザインされています。大きな岩は、一般的に島や山を表し、その岩から広がる砂紋は海の波を表しています。この砂紋の石庭は、もともと、日本古来の仏教寺院に取り入れられたもので、寺で働く僧侶たちが勤勉に砂を描きながら熟考することを通して悟りを得るのを助ける目的で作られました。
進行行程
エンダウメントの儀式の中で、人々は救いの計画とキリストの贖いを通して、どのように天のお父様の元へ戻るかを学びます。儀式の部屋のデザインの多くは、現世から天へ移動するという概念を象徴的に伝えています。エンダウメントを始める時に、最初の儀式の部屋に入りますが、そこには天地創造について描写する美しい壁画が周りにあります。
部屋の壁に描かれた美しい絵には、札幌周辺に生息する植物が描かれています。そして、前方側面にある絵には、蝦夷(えぞ)富士が描かれています。最初の儀式の部屋から次の部屋、そして日の栄えの部屋まで移動する際に、部屋の天井の高さ、大きさ、光の入り具合や、木の彫刻などが徐々に増していくことに気づくことでしょう。この変化は天へ戻るプロセスを象徴しています。
興味深いことに、日の栄えの部屋には2本の松の木のデザインがあります。松は、日本で最も馴染みのある木の一つであり、その木の象徴には、「堅固さ」「長寿」「幸福」があります。まさに、日の栄えの部屋にふさわしいものです。また、上から見た神殿の設計は、中央塔の下に日の栄えの部屋があり、四隅にある儀式の部屋が中央の聖なる場所を囲む形になっています。これはアジアにある神殿でよく見られるパターンです。
伝統的な花瓶
最後に、神殿内のあちらこちらで見られる美しい花瓶についてですが、これらの花瓶は中国唐王朝時代の影響を受けています。これは日本で人気のスタイルです。日の栄えの部屋にもその優雅な花瓶が二つ置かれています。新たに建てられた日本札幌神殿は、優雅な日本の文化や歴史を反映している美しい建物です。この神聖な主の家は、人々が主イエス・キリストの御元に近づき、天の王国に戻ることができる特別な場所なのです。
以下の写真はMormon Newsroom(英語)に掲載された、札幌神殿内部の最初の写真です。
この記事はダニエル・B・ワグナーによって書かれ、LDSLiving.comに掲載されたものです。